審決取消請求事件

(平成12年1月27日最高裁)

事件番号  平成7(行ツ)105

 

最高裁判所の見解

同一の特許に対して複数の者が

無効審判請求をすることは禁止されておらず、

特許を無効とすることについて利益を有する者は、

いつでも当該特許に対して無効審判請求をすることができるのであり、

この特許を無効とすることについての利益は、

無効審判請求をする者がそれぞれ有する固有の利益である。

 

しかし、ある特許の無効審判請求につき請求不成立審決が確定し、

その登録がされた場合において、更に同一の事実及び

同一の証拠に基づく無効審判請求の繰返しを許容することは、

特許権の安定を損ない、発明の保護、利用という

特許法の目的にも反することになる。

 

そこで、特許法一六七条は、無効審判請求をする者の

固有の利益と特許権の安定という利益との調整を図るため、

同条所定の場合に限って利害関係人の無効審判請求を

する権利を制限したものであるから、

この規定が適用される場合を拡張して解釈すべきではなく、

文理に則して解釈することが相当である。

 

仮に、確定した請求不成立審決の登録により、

既に係属している同一の事実及び同一の証拠に基づく

無効審判請求が不適法になると解するならば、

複数の無効審判請求事件が係属している場合において、

一部の請求人が請求不成立審決に対する不服申立てをしなかったときは、

これにより、他の請求人が自己の固有の利益のため追行してきた

それまでの手続を無に帰せしめ、その利益を失わせることとなり、

不合理といわざるを得ない。

 

以上のように解するときは、同一特許に対し同一の事実及び

同一の証拠に基づいて並行して複数の無効審判請求がされ、

特許庁の判断が請求不成立審決と特許を

無効にすべき旨の審決(以下「無効審決」という。)とに分かれ、

双方が確定する事態が生じ得ることになる。

 

しかし、無効審決が確定したときは、特許権は、

初めから存在しなかったものと

みなされるのであるから(特許法一二五条)、

これとは別に既に請求不成立審決が確定していたとしても、

当該特許の効力は失われるのであって、

審決の矛盾、抵触により法的状態に混乱を生ずることはない。

 

このことは、事実又は証拠を異にする無効審判請求について

請求不成立審決と無効審決がそれぞれ確定した場合と同様である。

 

また、同一特許に対する同一の事実及び同一の証拠に基づく

複数の無効審判請求につき、いずれについても請求不成立審決がされ、

一部の者との関係では確定し、

その余の者が右審決に対する取消訴訟を提起し請求認容判決及び

無効審決を得た場合もこれと同様に解することができる。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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