将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格

( 平成19年5月29日最高裁)

事件番号  平成18(受)882

 

この裁判は、

将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての

適格を有しないものとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1) 継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権については,

たとえ同一態様の行為が将来も継続されることが予測される場合であっても,

損害賠償請求権の成否及びその額を

あらかじめ一義的に明確に認定することができず,

具体的に請求権が成立したとされる時点において

初めてこれを認定することができ,かつ,

その場合における権利の成立要件の具備については

債権者においてこれを立証すべく,事情の変動を専ら

債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生として

とらえてその負担を債務者に課するのは

不当であると考えられるようなものは,

将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての

適格を有しないものと解するのが相当である。

 

そして,飛行場等において離着陸する航空機の発する騒音等により

周辺住民らが精神的又は身体的被害等を被っていることを理由とする

損害賠償請求権のうち事実審の

口頭弁論終結の日の翌日以降の分については,

将来それが具体的に成立したとされる時点の事実関係に基づき

その成立の有無及び内容を判断すべく,かつ,

その成立要件の具備については請求者において

その立証の責任を負うべき性質のものであって,

このような請求権が将来の給付の訴えを提起することのできる

請求権としての適格を有しないものであることは,

当裁判所の判例とするところである

(最高裁昭和51年(オ)第395号同56年12月16日

大法廷判決・民集35巻10号1369頁,

最高裁昭和62年(オ)第58号平成5年2月25日

第一小法廷判決・民集47巻2号643頁,

最高裁昭和63年(オ)第611号平成5年2月25日

第一小法廷判決・裁判集民事167号下359頁)。

 

(2) したがって,横田飛行場において離着陸する

米軍の航空機の発する騒音等により精神的又は

身体的被害等を被っていることを理由とする

被上告人らの上告人に対する

損害賠償請求権のうち事実審の

口頭弁論終結の日の翌日以降の分については,

その性質上,将来の給付の訴えを提起することのできる

請求権としての適格を有しないものであるから,

これを認容する余地はないものというべきである。

 

以上によれば,被上告人らの本件訴えのうち

原審の口頭弁論終結の日の翌日

(別紙被上告人目録1及び2記載の被上告人らにつき

平成16年12月9日,同目録3記載の被上告人につき

同17年3月17日)以降に生ずべき損害の賠償請求に係る部分は,

権利保護の要件を欠くものというべきであって,

被上告人らの上記損害賠償請求を原判決言渡日までの期間について

認容した原判決には,訴訟要件に関する法令の解釈の誤りがあり,

この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。

 

論旨は理由があり,原判決中上記将来の損害の賠償請求を

認容した部分は破棄を免れず,上記部分に係る訴えを却下した

第1審判決は相当であるから,

この部分についての被上告人らの控訴を棄却すべきである。

 

なお,被上告人らの本件訴えのうち将来生ずべき損害の賠償請求に係る部分は,

上記のとおり不適法でその不備を補正することができないものであるから,

口頭弁論を経ないで判決をすることとする

(最高裁平成13年(行ツ)第205号,同年(行ヒ)第202号

同14年12月17日第三小法廷判決・裁判集民事208号581頁参照)。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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