小学校の担任教諭の児童の安全確保等についての過失

(平成20年4月18日最高裁)

事件番号  平成19(受)1180

 

最高裁判所の見解

前記事実関係によれば,本件事故は,朝自習の時間帯に,

教室入口付近の自席に座っていた担任教諭の下に

4,5名の児童が忘れ物の申告をするなどの話をしに来ており,

被上告人X 自身も,教科書を机に入れたりした後,

ランドセルをロッカーにしまおうとして

席を立ったという状況の下で発生したのであるが,

朝自習の時間帯であっても,朝の会に移行する前に,

忘れ物の申告等担任教諭に伝えておきたいと思っていることを

話すために同教諭の下に行くことも,

教科書など授業を受けるのに必要な物を机に入れて

ランドセルをロッカーにしまうことも,

児童にとって必要な行動というべきであるから,

「用もないのに自分の席を離れない」という学級の約束は,

このような児童にとって必要な行動まで禁じるものではなく,

児童が必要に応じて離席することは許されていたと解されるし,

それは合理的な取扱いでもあったというべきである。

 

そして,Aが日常的に乱暴な行動を取っていたなど,

担任教諭において日ごろから特にAの動静に

注意を向けるべきであったというような事情もうかがわれないから,

Aが離席したこと自体をもって,担任教諭において

その動静を注視すべき問題行動であるということはできない。

 

また,前記事実関係によれば,Aは,

離席した後にロッカーから落ちていたベストを

拾うため教室後方に移動し,

ほこりを払うためベストを上下に振るなどした後,

更に移動してベストを頭上で振り回したというのであり,

その間,担任教諭は,教室入口付近の自席に座り,

他の児童らから忘れ物の申告等を受けてこれに応対していて

Aの動静を注視していなかったというのであるが,

ベストを頭上で振り回す直前までのAの行動は自然なものであり,

特段危険なものでもなかったから,他の児童らに応対していた

担任教諭において,Aの動静を注視し,

その行動を制止するなどの注意義務があったとはいえず,

Aがベストを頭上で振り回すというような危険性を

有する行為に出ることを予見すべき注意義務があったともいえない。

 

したがって,担任教諭が,ベストを頭上で振り回すという

突発的なAの行動に気付かず,本件事故の発生を

未然に防止することができなかったとしても,

担任教諭に児童の安全確保又は児童に

対する指導監督についての過失があるということはできない。

 

以上と異なる原審の判断には判決の結論に

影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

この趣旨をいう論旨は理由があり,

原判決のうち上告人の敗訴部分は破棄を免れない。

 

そして,以上説示したところによれば,

被上告人らの上告人に対する請求は理由がなく,

これを棄却した第1審判決は正当であるから,

被上告人らの控訴をいずれも棄却すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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