工場の操業に起因する騒音等により被害を受けているとして隣接地住民がした操業の差止め及び慰謝料の請求

(平成6年3月24日最高裁)

事件番号  平成1(オ)1682

 

最高裁判所の見解

工場等の操業に伴う騒音、粉じんによる被害が、

第三者に対する関係において、違法な権利侵害ないし

利益侵害になるかどうかは、侵害行為の態様、侵害の程度、

被侵害利益の性質と内容、当該工場等の所在地の地域環境、

侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、

その間に採られた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、

効果等の諸般の事情を総合的に考察して、

被害が一般社会生活上受忍すべき程度を

超えるものかどうかによって決すべきである。

 

工場等の操業が法令等に違反するものであるかどうかは、

右の受忍すべき程度を超えるかどうかを判断するに際し、

右諸般の事情の一つとして考慮されるべきであるとしても、

それらに違反していることのみをもって、

第三者との関係において、その権利ないし

利益を違法に侵害していると断定することはできない。

 

このような見地に立って本件を検討するのに、

前記事実関係によると、被上告人の住居は、

被上告人住所地にあった旧建物の二、三階から、

同地上に建て替えられた新建物の一〇階西側部分に替っており、

新建物は本件工作物に面した南側には窓などの

閉口部がほとんどないというのであるから、

原審認定のように粉じんの流入がなくなっただけではなく、

騒音についても、被上告人の住居に流入する音量等が変化し、

被上告人が本件工作物の操業に伴う騒音によって

被っている被害の質、程度が変化していることは、

経験則上明らかである。

 

したがって、被上告人の現在の住居に流入する

騒音の音量、程度等、ひいてはそれによる被上告人の

被害の程度の変化について審理し、

これをも考慮に入れて本件工作物の操業に伴う騒音、

粉じんによる被上告人の被害が社会生活上の受忍すべき

程度を超えるものであるかどうかを判断すべきものである。

 

また、原審は、前記のとおり、

(一) 被上告人住所地は、相当の交通騒音が

存在する地域に属すること、

(二) 本件工作物の操業に伴う騒音は、

瞬間的な砂利投下音を別にすると環境騒音とほぼ同じレベルであり、

しかも、窓を閉めることによって室内に

流入する騒音は相当低下すること、

(三) 上告会社において、騒音、粉じんに対する各種の対策を講じ、

それが相応の効果を挙げていることなどの事実を確定しているのであって、

これらの事実も右の判断に当たって考慮に入れなければならない。

 

ところが、原審は、被上告人の

現在の住居に流入する騒音の程度等について

審理せず、漫然と被上告人の被害が続いていると認定した上、

前記のような各判断要素を総合的に考察することなく、

上告会社の違法操業の態様が著しく悪質で違法性が高いことを主たる理由に、

上告会社の本件工作物の操業に伴う騒音、

粉じんによって上告人の権利ないし利益を

違法に侵害していると判断したものであるから、

原審の右判断には、法令の解釈適用の誤り、

ひいては審理不尽、理由不備の違法があり、

右違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。

 

論旨は、右の趣旨をいうものとして理由があり、

その余の上告理由について判断するまでもなく、

原判決中上告人敗訴の部分は破棄を免れない。

 

そして、前記の点について更に審理を尽くさせる必要があるから、

右部分につき本件を原審に差し戻すこととする。

 

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