工場抵当法3条の抵当物件目録の記載と対抗要件

(平成6年7月14日最高裁)

事件番号  平成3(オ)1762

 

最高裁判所の見解

工場の所有者が工場に属する土地又は建物の上に設定した

抵当権(以下「工場抵当権」という。)は、

その土地又は建物に付加してこれと一体を成した物及び

その土地又は建物に備え付けた機械、器具

その他工場の用に供する物(以下、後者を「供用物件」という。)に

及ぶが(法二条参照)、法三条一項は、工場の所有者が

右土地又は建物につき抵当権設定の登記を申請する場合には、

供用物件につき目録(三条目録)を提出すべき旨を規定し、

同条二項の準用する法三五条によれば、右目録は登記簿の一部とみなされ、

その記載は登記とみなされている。

 

また、法三条二項の準用する法三八条は、

右目録の記載事項に変更が生じたときは、

所有者は遅滞なくその記載の変更の登記を申請すべき旨を規定している。

 

右各条項の規定するところに照らせば、

工場抵当権者が供用物件につき第三者に対して

その抵当権の効力を対抗するには、

三条目録に右物件が記載されていることを要するもの、

言い換えれば、三条目録の記載は第三者に対する

対抗要件であると解するのが相当である。

 

もっとも、土地又は建物に対する抵当権設定の登記による対抗力は、

その設定当時右土地又は建物の従物であった物に

ついても生ずるから(最高裁昭和四三年(オ)

第一二五〇号同四四年三月二八日第二小法廷判決・

民集二三巻三号六九九頁参照)、工場抵当権についても、

供用物件のうち抵当権設定当時工場に属する土地又は

建物の従物であったものについては

三条目録の記載を要しないとする考え方もあり得ないではない。

 

しかしながら、供用物件のうち右土地又は

建物の従物に当たるものについて三条目録の記載を要しないとすれば、

抵当権設定の当事者ないし第三者は、

特定の供用物件が従物に当たるかどうかという

実際上困難な判断を強いられ、また、抵当権の実行手続において、

執行裁判所もまた同様の判断を余儀なくされることとなる。

 

したがって、法が供用物件について三条目録を提出すべきものとしている

趣旨は、供用物件が従物に当たるかどうかを問わず、

一律にこれを三条目録に記載すべきものとし、そのことにより、

右のような困難な判断を回避し、工場抵当権の

実行手続を簡明なものとすることにもあるというべきである。

 

そうすると、これと異なる見解に立って、

被上告人の請求を棄却した第一審判決を取り消して

その請求を認容した原判決は、工場抵当法の解釈適用を

誤ったものというべきであり、その違法が判決の結論に

影響を及ぼすことは明らかであって、

この点の違法をいう論旨は理由があり、

上告人のその余の論旨について判断するまでもなく、

原判決は破棄を免れない。

 

そして、前記の事実関係に照らせば、

本件物件が供用物件に当たることは明らかであり、

被上告人の工場抵当権については本件物件につき

三条目録が提出されていなかったのであるから、

被上告人は、本件物件について工場抵当権を有する

上告人に優先して本件物件の売却代金から配当を受けることは

できないものといわなければならない。

 

したがって、右に判示したところと結論を同じくする

第一審判決は正当であって、

被上告人の控訴は理由がなくこれを棄却すべきものである。

 

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