常習特殊窃盗罪

(平成15年10月7日最高裁)

事件番号  平成14(あ)743

 

最高裁判所の見解

常習特殊窃盗罪は,異なる機会に犯された別個の各窃盗行為を

常習性の発露という面に着目して一罪としてとらえた上,

刑罰を加重する趣旨の罪であって,

常習性の発露という面を除けば,その余の面においては,

同罪を構成する各窃盗行為相互間に本来的な結び付きはない。

 

したがって,実体的には常習特殊窃盗罪を

構成するとみられる窃盗行為についても,

検察官は,立証の難易等諸般の事情を考慮し,

常習性の発露という面を捨象した上,基本的な犯罪類型である

単純窃盗罪として公訴を提起し得ることは,当然である。

 

そして,実体的には常習特殊窃盗罪を構成するとみられる

窃盗行為が単純窃盗罪として起訴され,確定判決があった後,

確定判決前に犯された余罪の窃盗行為(実体的には確定判決を経由した

窃盗行為と共に一つの常習特殊窃盗罪を構成するとみられるもの)が,

前同様に単純窃盗罪として起訴された場合には,

当該被告事件が確定判決を経たものと

みるべきかどうかが,問題になるのである。

 

この問題は,確定判決を経由した事件(以下「前訴」という。)の訴因及び

確定判決後に起訴された確定判決前の

行為に関する事件(以下「後訴」という。)の

訴因が共に単純窃盗罪である場合において,

両訴因間における公訴事実の単一性の有無を判断するに当たり,

①両訴因に記載された事実のみを基礎として両者は併合罪関係にあり

一罪を構成しないから公訴事実の単一性はないとすべきか,それとも,

②いずれの訴因の記載内容にもなっていないところの犯行の常習性という

要素について証拠により心証形成をし,

両者は常習特殊窃盗として包括的一罪を構成するから

公訴事実の単一性を肯定できるとして,

前訴の確定判決の一事不再理効が後訴にも及ぶとすべきか,

という問題であると考えられる。

 

思うに,訴因制度を採用した現行刑訴法の下においては,

少なくとも第一次的には訴因が審判の対象であると解されること,

犯罪の証明なしとする無罪の確定判決も

一事不再理効を有することに加え,

前記のような常習特殊窃盗罪の性質や一罪を構成する行為の

一部起訴も適法になし得ることなどにかんがみると,

前訴の訴因と後訴の訴因との間の公訴事実の単一性についての判断は,

基本的には,前訴及び後訴の各訴因のみを基準として

これらを比較対照することにより行うのが相当である。

 

本件においては,前訴及び後訴の訴因が共に単純窃盗罪であって,

両訴因を通じて常習性の発露という面は

全く訴因として訴訟手続に上程されておらず,

両訴因の相互関係を検討するに当たり,

常習性の発露という要素を考慮すべき契機は存在しないのであるから,

ここに常習特殊窃盗罪による一罪という観点を持ち込むことは,

相当でないというべきである。

 

そうすると,別個の機会に犯された単純窃盗罪に係る

両訴因が公訴事実の単一性を欠くことは明らかであるから,

前訴の確定判決による一事不再理効は,

後訴には及ばないものといわざるを得ない。

 

以上の点は,各単純窃盗罪と科刑上一罪の関係にある

各建造物侵入罪が併せて起訴された場合についても,

異なるものではない。

 

なお,前訴の訴因が常習特殊窃盗罪又は常習累犯窃盗罪

(以下,この両者を併せて「常習窃盗罪」という。)であり,

後訴の訴因が余罪の単純窃盗罪である場合や,逆に,

前訴の訴因は単純窃盗罪であるが,

後訴の訴因が余罪の常習窃盗罪である場合には,

両訴因の単純窃盗罪と常習窃盗罪とは

一罪を構成するものではないけれども,

両訴因の記載の比較のみからでも,

両訴因の単純窃盗罪と常習窃盗罪が実体的には

常習窃盗罪の一罪ではないかと強くうかがわれるのであるから,

訴因自体において一方の単純窃盗罪が他方の常習窃盗罪と実体的に

一罪を構成するかどうかにつき検討すべき

契機が存在する場合であるとして,

単純窃盗罪が常習性の発露として行われたか否かについて

付随的に心証形成をし,両訴因間の公訴事実の単一性の

有無を判断すべきであるが(最高裁昭和42年(あ)

第2279号同43年3月29日第二小法廷判決・

刑集22巻3号153頁参照),本件は,これと異なり,

前訴及び後訴の各訴因が共に単純窃盗罪の場合であるから,

前記のとおり,常習性の点につき実体に立ち入って

判断するのは相当ではないというべきである。

 

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