建物の区分所有等に関する法律31条1項,建物の区分所有等に関する法律66条

(平成22年1月26日最高裁)

事件番号  平成20(受)666

 

この裁判は、

団地建物所有者全員で構成されるマンション管理組合の

総会決議により行われた自ら専有部分に居住しない組合員が

組合費に加えて住民活動協力金を負担すべきものとする旨の規約の変更が,

建物の区分所有等に関する法律66条,31条1項後段にいう

「一部の団地建物所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」

に当たらないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1) 法66条が準用する法31条1項後段の

「規約の設定,変更又は廃止が一部の

団地建物所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」とは,

規約の設定,変更等の必要性及び合理性とこれによって

一部の団地建物所有者が受ける不利益とを比較衡量し,

当該団地建物所有関係の実態に照らして,その不利益が

一部の団地建物所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう

(最高裁平成8年(オ)第258号同10年10月30日

第二小法廷判決・民集52巻7号1604頁参照)。

 

(2) 前記事実関係によれば,本件マンションは,規模が大きく,

その保守管理や良好な住環境の維持には上告人及び

その業務を分掌する各種団体の活動やそれに対する

組合員の協力が必要不可欠であるにもかかわらず,

本件マンションでは,不在組合員が増加し,

総戸数868戸中約170戸ないし180戸が

不在組合員の所有する専有部分となり,

それらの不在組合員は,上告人の選挙規程上,

その役員になることができず,役員になる義務を免れているだけでなく,

実際にも,上告人の活動について日常的な労務の提供をするなどの

貢献をしない一方で,居住組合員だけが,

上告人の役員に就任し,

上記の各種団体の活動に参加するなどの貢献をして,

不在組合員を含む組合員全員のために

本件マンションの保守管理に努め,

良好な住環境の維持を図っており,

不在組合員は,その利益のみを

享受している状況にあったということができる。

 

いわゆるマンションの管理組合を運営するに当たって

必要となる業務及びその費用は,本来,

その構成員である組合員全員が平等にこれを負担すべきものであって,

上記のような状況の下で,上告人が,その業務を分担することが

一般的に困難な不在組合員に対し,本件規約変更により

一定の金銭的負担を求め,本件マンションにおいて生じている

不在組合員と居住組合員との間の

上記の不公平を是正しようとしたことには,

その必要性と合理性が認められないものではないというべきである。

 

居住組合員の中にも,上記のような活動に消極的な者や

高齢のためにこれに参加することが事実上困難な者も

いることはうかがえるのであって,これらの者に対しても

何らかの金銭的な負担を求めることについては

検討の余地があり得るとしても,

不在組合員の所有する専有部分が本件マンションの全体に占める割合が

上記のように大きなものになっていること,

不在組合員は個別の事情にかかわらず類型的に

上告人や上記の各種団体の活動に

参加することを期待し得ないことを考慮すると,

不在組合員のみを対象として金銭的負担を求めることが

合理性を欠くとみるのは相当ではない。

 

また,平成19年総会における決議により,

役員に対する報酬及び必要経費の支払が規約上可能になったものの,

上告人の活動は役員のみによって担われているものではなく,

不在組合員と居住組合員との間の上記の不公平が,

役員に対する報酬の支払によって

すべて補てんされるものではないから,

そのことを理由として本件規約変更の必要性及び

合理性を否定することはできない。

 

そして,本件規約変更により不在組合員が受ける不利益は,

月額2500円の住民活動協力金の支払義務の負担であるところ,

住民活動協力金は,全組合員から一律に徴収されている組合費と

共に上告人の一般会計に組み入れられており,

組合費と住民活動協力金とを合計した不在組合員の金銭的負担は,

居住組合員が負担する組合費が月額1万7500円であるのに対し,

その約15%増しの月額2万円にすぎない。

 

上記のような本件規約変更の必要性及び合理性と

不在組合員が受ける不利益の程度を比較衡量し,加えて,

上記不利益を受ける多数の不在組合員のうち,現在,

住民活動協力金の趣旨に反対してその支払を拒んでいるのは,

不在組合員が所有する専有部分約180戸のうち

12戸を所有する5名の不在組合員にすぎないことも考慮すれば,

本件規約変更は,住民活動協力金の額も含め,

不在組合員において受忍すべき限度を超えるとまではいうことができず,

本件規約変更は,法66条,31条1項後段にいう

「一部の団地建物所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」

に該当しないというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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