木造建物の所有を目的とする土地の使用貸借につき使用収益をするのに足りるべき期間の経過を否定することができないとされた事例

(平成11年2月25日最高裁)

事件番号  平成10(オ)513

 

最高裁判所の見解

土地の使用貸借において、民法五九七条二項ただし書所定の使用収益をするのに

足りるべき期間が経過したかどうかは、

経過した年月、土地が無償で貸借されるに至った特殊な事情、

その後の当事者間の人的つながり、土地使用の目的、方法、程度、貸主の

土地使用を必要とする緊要度など双方の諸事情を比較衡量して

判断すべきものである(最高裁昭和四四年(オ)第三七五号同四五年一〇月一六日第二小法廷判決・

裁判集民事一〇一号七七頁参照)。

 

本件使用貸借の目的は本件建物の所有にあるが、

被上告人が昭和三三年一二月ころ本件使用貸借に基づいて

本件土地の使用を始めてから原審口頭論終結の日である

平成九年九月一二日までに約三八年八箇月の長年月を経過し、

この間に、本件建物で被上告人と同居していたDは死亡し、

その後、上告人の経営をめぐってEと被上告人の利害が対立し、

被上告人は、上告人の取締役の地位を失い、

本件使用貸借成立と比べて貸主である上告人と借主である

被上告人の間の人的つながりの状況は著しく変化しており、

これらは、使用収益をするのに足りるべき

期間の経過を肯定するのに役立つ事情というべきである。

 

他方、原判決が挙げる事情のうち、本件建物が

いまだ朽廃していないことは考慮すべき事情であるとはいえない。

 

そして、前記長年月の経過等の事情が認められる本件においては、

被上告人には本件建物以外に居住するところがなく、また、

上告人には本件土地を使用する必要特別の事情が生じていないと

いうだけでは使用収益をするのに足りるべき期間の経過を

否定する事情としては不十分であるといわざるを得ない。

 

そうすると、その他の事情を認定することなく、

本件使用貸借において使用収益をするのに足りるべき期間の

経過を否定した原審の判断は、民法五九七条二項ただし書の

解釈適用を誤ったものというべきであり、

その違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

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