建物等共有物分割
(平成9年4月25日最高裁)
事件番号 平成7(オ)2461
最高裁判所の見解
1 共有物分割の申立てを受けた裁判所としては、
現物分割をするに当たって、持分の価格以上の現物を
取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ、
過不足の調整をすることができるが
(最高裁昭和五九年(オ)第八〇五号同六二年四月二二日大法廷判決・
民集四一巻三号四〇八頁参照)、
これにとどまらず、当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、
共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の
経済的価値、分割方法についての共有者の希望及び
その合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、
当該共有物を共有者のうちの特定の者に
取得させるのが相当であると認められ、かつ、
その価格が適正に評価され、当該共有物を
取得する者に支払能力があって、
他の共有者にはその持分の対価を取得させることとしても
共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情があるときは、
共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、
これらの者から他の共有者に対して
持分の価格を賠償させる全面的価格賠償の方法による分割をすることも
許されるものというべきである
(最高裁平成三年(オ)第一三八〇号同八年一〇月三一日第一小法廷判決・
民集五〇巻九号二五六三頁参照)。
2 これを本件についてみるに、前記一のとおり
本件借地権等は亡Dから上告人に対して遺贈されたものであり、
被上告人がこれに対して遺留分減殺請求権を行使した結果、
その共有関係が発生したものである上、六分の一の持分を有するにすぎない
被上告人が競売による分割を提案してでるのに対し、
六分の五の持分を有する上告人は、
今後も本件建物に居住することを希望し、
自らがこれを単独で取得する全面的価格賠償の方法による
分割を提案していることにかんがみると、
本件借地権の存続期間などの事情によっては、
必ずしも本件借地権等を上告人に
取得させるのが相当でないとはいえないし、
上告人の支払能力次第では、本件借地権等の適正な
価額に従って被上告人にその特分の対価を取得させることとしても、
共有者間の実質的公平を害することにはならないものと考えられる。
四 そうすると、本件について、
全面的価格賠償の方法により共有物を分割することの許される
特段の事情の存否について審理判断することなく、
直ちに競売による分割をすべきものとした原審の判断には、
民法二五八条の解釈適用の誤り、ひいては
審理不尽、理由不備の違法があるというべきであり、
この違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。
この点をいう論旨は理由があるから、
原判決は破棄を免れず、更に審理を尽くさせるため、
本件を原審に差し戻すこととする。
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