建築基準法にかかわる問題があることを説明しなかった説明義務違反

(平成18年6月12日最高裁)

事件番号  平成16(受)1219

 

この裁判は、

建築会社の担当者が顧客に対し融資を受けて

顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後に

その敷地の一部売却により返済資金を調達する計画を提案した際に

上記計画には建築基準法にかかわる問題があることを

説明しなかった点に説明義務違反があるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1) 前記事実関係によれば,上告人は,本件各担当者の説明により,

本件貸付けの返済計画が実現可能であると考え,

被上告人Y との間で本件建物の設計契約及び

建築請負契約を締結し,被上告銀行から本件貸付けを受け,

本件建物が建築されたところ,本件北側土地の売却により,

本件建物は,その余の敷地部分のみでは

容積率の制限を超える違法な建築物となるのであるから,

上告人としては,十分な広さの隣接土地を

本件建物の敷地として確保しない限り,

本件北側土地を売却してはならないこととなり,また,

本件北側土地を売却する場合には,買主がこれを敷地として

建物を建築する際,敷地の二重使用となって

建築確認を直ちには受けられない可能性があったのであるから,

信義則上敷地の二重使用の問題を買主に明らかにして

売却する義務がある以上,本件建物がない場合に比べて

売却価格が大きく低下せざるを得ないことは明らかである。

 

したがって,本件建物を建築した後に

本件北側土地を予定どおり売却することは,

もともと困難であったというべきである。

 

本件計画には,上記のような問題があり,

このことは,上告人が被上告人Yとの間で

上記各契約を締結し,被上告銀行との間で

本件貸付けに係る消費貸借契約を締結するに当たり,

極めて重要な考慮要素となるものである。

 

したがって,Y 担当者には,本件計画を提案するに際し,

上告人に対して本件敷地問題とこれによる

本件北側土地の価格低下を説明すべき

信義則上の義務があったというべきである。

 

しかるに,Y 担当者は,本件敷地問題を認識していたにもかかわらず,

売却後の本件北側土地に建物が建築される際,

建築主事が敷地の二重使用に気付かなければ

建物の建築に支障はないなどとして,

本件敷地問題について建築基準法の趣旨に反する判断をし,

上告人に対し,本件敷地問題について何ら説明することなく,

本件計画を上告人に提案したというのであるから,

Y 担当者の行為は,上記説明義務に違反することが明らかであり,

被上告人Y は,上告人に対し,上記説明義務違反によって

上告人に生じた損害について賠償すべき責任を負うというべきである。

 

これと異なる原審の上記判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

この点に関する論旨は,理由がある。

 

(2) 一般に消費貸借契約を締結するに当たり,

返済計画の具体的な実現可能性は借受人において検討すべき事柄であり,

本件においても,銀行担当者には,返済計画の内容である

本件北側土地の売却の可能性について調査した上で

上告人に説明すべき義務が当然にあるわけではない。

 

しかし,前記事実関係によれば,銀行担当者は,上告人に対し,

本件各土地の有効利用を図ることを提案して

被上告人Y を紹介しただけではなく,

本件北側土地の売却により被上告銀行に対する

返済資金をねん出することを前提とする本件経営企画書を

基に本件投資プランを作成し,これらに基づき,

Y 担当者と共にその内容を説明し,上告人は,

上記説明により,本件貸付けの返済計画が実現可能であると考え,

本件貸付けを受けて本件建物を建築したというのである。

 

そして,上告人は,銀行担当者が上記説明をした際,

本件北側土地の売却について銀行も取引先に働き掛けてでも

確実に実現させる旨述べるなど特段の事情があったと主張しているところ,

これらの特段の事情が認められるのであれば,

銀行担当者についても,本件敷地問題を含め本件北側土地の売却可能性を調査し,

これを上告人に説明すべき信義則上の義務を

肯認する余地があるというべきである。

 

しかるに,原審は,上記の点について何ら考慮することなく,

直ちに上記説明義務を否定しているのであるから,

原審の上記判断には,審理不尽の結果,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

この点に関する論旨は,上記の趣旨をいうものとして理由がある。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク