建築基準法第59条の2第1項による許可処分等取消請求事件

(平成14年3月28日最高裁)

事件番号  平成9(行ツ)159

 

 

最高裁判所の見解

(1) 行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,

同条にいう当該処分の取消しを求めるにつき

「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により

自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,

又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,

当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を

専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,

それが帰属する個々人の個別的利益としても

これを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,

かかる利益も上記の法律上保護された利益に当たり,

当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,

当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。

 

そして,当該行政法規が,不特定多数者の具体的利益を

それが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものと

する趣旨を含むか否かは,当該行政法規の趣旨・目的,

当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている

利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである

(最高裁平成元年(行ツ)第130号同4年9月22日

第三小法廷判決・民集46巻6号571頁,

最高裁平成6年(行ツ)第189号同9年1月28日第三小法廷判決・

民集51巻1号250頁参照)。

 

(2) 上記の見地に立って,上告人らの

本件総合設計許可の取消しを求める原告適格について検討する。

 

建築基準法は,建築物の敷地,構造等に関する最低の基準を定めて,

国民の生命,健康及び財産の保護を図ることなどを

目的とするものである(1条)ところ,

同法59条の2第1項は,同法52条の容積率制限,

同法55条又は56条の高さ制限の特例として,

一定規模以上の広さの敷地を有し,かつ,

敷地内に一定規模以上の空地を有する場合に限り,安全,防火,

衛生等の観点から支障がないと認められることなどの要件の下に,

これらの制限を緩和することを認めている。

 

容積率制限や高さ制限の規定の趣旨・目的等をも考慮すれば,

同法59条の2第1項の規定は,

これらの制限の緩和を認めて

大規模な建築物を建築することを可能にする一方で,

必要な空間を確保することにより,

当該建築物及びその周辺の建築物における日照,通風,採光等を

良好に保つなど快適な居住環境を確保することができるようにするとともに,

当該建築物が地震,火災等により倒壊,炎上するなど

万一の事態が生じた場合に,その周辺の建築物や

その居住者に重大な被害が及ぶことのないよう適切な設計が

されていることなどを審査し,安全,防火,衛生等の観点から

支障がないと認められる場合にのみ

許可をすることとしているものと解される

(最高裁平成9年(行ツ)第7号同14年1月22日第三小法廷判決・

民集56巻1号登載予定参照)。以上のような同項の趣旨・目的,

同項が総合設計許可を通して保護しようとしている

利益の内容・性質等にかんがみれば,同項は,上記許可に係る建築物の建築が

市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに,

当該建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物に居住する者の健康を

個々人の個別的利益としても保護すべきものとする

趣旨を含むものと解すべきである。

そうすると,総合設計許可に係る建築物により

日照を阻害される周辺の他の建築物の居住者は,

総合設計許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,

その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。

 

前記事実関係によれば,上告人A1外4名は,

いずれもその居住する建築物が,

本件建築物により日照を阻害されるから,

本件総合設計許可の取消しを求める

原告適格を有するものというべきである。

 

そうすると,同上告人らにつき

本件総合設計許可の取消しを求める原告適格を否定し,

その取消しを求める訴えを却下すべきものとした原審の判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

論旨は,この趣旨をいう限度で理由があり,

原判決中同上告人らの本件総合設計許可取消請求に

関する部分は破棄を免れない。

 

そして,同部分につき訴えを却下した第1審判決を取り消した上,

これをさいたま地方裁判所に差し戻すべきである。

 

これに対し,上告人A1外4名以外の上告人らは,

その居住する建築物が本件建築物により日照等を

阻害される旨の主張をしておらず,

他に本件総合設計許可の取消しを求める

法律上の利益があるというべき根拠は見いだせないから,

原判決中同上告人らにつき

本件総合設計許可の取消しを求める原告適格を否定し,

その取消しを求める訴えを却下すべきものとした原審の判断は,

結論において是認することができる。

この点に関する論旨は,採用することができない。

 

(3) さらに,本件都市計画道路が完成して供用が

開始されたことにより本件認定処分の取消しを

求める訴えの利益が失われたことは,

後記のとおりであるから,上告人A1外4名以外の

上告人らの本件認定処分の取消しを求める訴えは不適法である。

 

そうである以上,その訴えを

却下すべきものとした原審の判断を論難する論旨は,

原判決の結論に影響しない事項の

違法をいうものということになるから,

この点につき判断するまでもなく,

採用することができない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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