情報公開法5条2号イ所定の不開示情報

(平成23年10月14日最高裁)

事件番号  平成20(行ヒ)67

 

この裁判では、

エネルギーの使用の合理化に関する法律

(平成17年法律第93号による改正前のもの)11条の規定により

製造業の事業者が経済産業局長に提出した定期報告書に

記載された工場単位の各種の燃料等及び

電気の使用量等の各数値を示す情報が,

情報公開法5条2号イ所定の

不開示情報に当たるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1) 前記事実関係等によれば,本件数値情報は,本件各工場において

特定の年度に使用された各種エネルギーの種別及び

使用量並びに前年度比等の各数値を示す情報であり,

本件各事業者の内部において管理される情報としての

性質を有するものであって,製造業者としての

事業活動に係る技術上又は営業上の事項等と

密接に関係するものということができる。

 

そして,前記2(2)及び(3)のとおり,

平成17年法律第61号による温暖化対策推進法の改正によって

定められた温室効果ガス算定排出量の公表及び

開示に係る制度においては,

事業所単位のエネルギー起源二酸化炭素の

温室効果ガス算定排出量を算定する基となる本件数値情報に相当する

情報が報告及び開示の対象から除外されており,かつ,

この情報が情報公開法5条2号イと同様の要件を満たす場合には,

各事業者の権利,競争上の地位

その他正当な利益(以下「権利利益」という。)に配慮して,

事業所単位各物質におけるエネルギーコスト,

製造原価及び省エネルギーの技術水準並びにこれらの

経年的推移等についてより精度の高い推計を

行うことが可能となるものというべきである。

 

これらによれば,競業者にとっては,

本件数値情報が開示された場合,上記のような総合的な

分析に自らの同種の数値に関する情報等との

比較検討を加味することによって,

上記の点についての更に精度の高い推計を

行うことができるものというべきであり,

本件各工場におけるエネルギーコスト,

製造原価及び省エネルギーの

技術水準並びにこれらの経年的推移等についての

各種の分析に資する情報として,

これを自らの設備や技術の改善計画等に用いることが

可能となるものということができる。

 

また,需要者にとっても,本件数値情報が開示された場合,

上記のような総合的な分析によってエネルギーコスト及び

製造原価並びにこれらの経年的推移等の推計を行うことにより,

本件各工場におけるエネルギーコストの減少の度合い等を

把握することができるものというべきであり,

本件各事業者との製品の価格交渉等において,

この点についての客観的な裏付けのある情報として

これを交渉の材料等に用いることが可能となるものということができる。

 

そして,前記事実関係等によれば,供給者にとっても,

本件数値情報が開示された場合,本件各工場における

燃料等の使用量と本件各工場への自らの供給量とを比較することにより,

その供給量が本件各工場における燃料等の全使用量に占める

割合等を正確に把握することができるものというべきであり,

本件各事業者との燃料等の価格交渉等において,

この点についての客観的な裏付けのある情報として

これを交渉の材料等に用いることが可能となるものということができる。

 

イ 他方,前記事実関係等によれば,本件各事業者は,

製造業を事業目的とする一般の私企業であることが認められるところ,

本件数値情報は,その内容が法令で事項及び細目を定められているため,

本件各事業者としては,定期報告書を提出する際に

これが将来開示され得る可能性を考慮して表現に配慮するなどの余地がなく,

報告についても罰則をもって強制されていることから,

仮に本件数値情報が開示されるとすれば

上記アのような不利な状況に置かれることを回避することは

極めて困難であるものといわざるを得ない。

 

(3) 以上のような本件数値情報の内容,性質及び

その法制度上の位置付け,本件数値情報をめぐる競業者,需要者及び

供給者と本件各事業者との利害の状況等の諸事情を総合勘案すれば,

本件数値情報は,競業者にとって本件各事業者の

工場単位のエネルギーに係るコストや技術水準等に関する

各種の分析及びこれに基づく設備や

技術の改善計画等に資する有益な情報であり,

また,需要者や供給者にとっても本件各事業者との

製品や燃料等の価格交渉等において有意な事項に関する

客観的な裏付けのある交渉の材料等となる

有益な情報であるということができ,

本件数値情報が開示された場合には,

これが開示されない場合と比べて,

これらの者は事業上の競争や価格交渉等においてより

有利な地位に立つことができる反面,

本件各事業者はより不利な条件の下での

事業上の競争や価格交渉等を強いられ,

このような不利な状況に置かれることによって

本件各事業者の競争上の地位その他正当な利益が害される

蓋然性が客観的に認められるものというべきである。

 

原審は,前記4のとおり,本件数値情報による

推計の精度の程度を主な理由として,

本件数値情報は情報公開法5条2号イ所定の

不開示情報に当たらないというが,上記の諸事情に照らせば,

その精度の程度等をもって,本件数値情報の開示によって

本件各事業者が上記のように事業上の競争や価格交渉等において

不利な状況に置かれる蓋然性の有無の判断が

左右されるものではないというべきである。

 

以上によれば,本件数値情報は,

これが公にされることにより本件各事業者の競争上の地位

その他正当な利益を害するおそれがあるものとして,

情報公開法5条2号イ所定の不開示情報に当たるというべきである。

 

なお,前記事実関係等によれば,本件数値情報は,

その内容,性質に鑑み,人の生命,健康,生活又は

財産を保護するために公にすることが必要であるとは認められず,

情報公開法5条2号ただし書所定の開示すべき

情報に当たるものでないことは明らかである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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