憲法22条1項,酒税法9条1項,酒税法56条1項1号

(平成10年3月24日最高裁)

事件番号  平成5(あ)1135

 

最高裁判所の見解

酒類販売業免許制は、酒税によって定められた

職業の許可制による規制であるが、職業の自由

に対する規制措置のうち、許可制は、

職業選択の自由そのものに制約を課する強力な制限であるから、

その憲法二二条一項適合性を肯定するためには、

原則として、重要な公共の利益のために必要かつ

合理的な措置であることを要するものというべきである

(最高裁昭和四三年(行ツ)第一二〇号同五〇年四月三〇日大法廷判決・

民集二九巻四号五七二頁参照)。

 

また、租税法の定立については、

国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての

正確な資料を基礎とする立法の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、

裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重すべきである

(最高裁昭和五五年(行ツ)第一五号同六〇年三月二七日大法廷判決・

民集三九巻二号二四七頁参照)。

 

そうすると、酒税法による酒類販売業の免許制規制についても,

その必要性と合理性についての立法府の判断が、

右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、

著しく不合理なものでない限り、

これを憲法二二条一項の規定に違反するものとはいえないと解される。

 

酒類販売業免許制は、昭和一三年に採用された当時、

酒税の国税収入全体に占める割合が高く、

酒類の販売代金に占める酒税比率も高率であったこと等に照らして、

酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという重要な公共の利益のために、

税負担の消費者への円滑な転嫁を実現する目的で実施されたものであって、

その必要性と合理性があったということができる。

 

その後、社会経済の状況や税制度に変化があり、

これに伴い、酒税の国税収入全体に占める割合が

相対的に低下するに至ったことから、

免許制を存置しておくことの必要性及び合理性については、

議論があるところであり、また、近時、

酒類販売業に関するいわゆる規制緩和論が高まり、あるいは、

その免許制の柔軟な運用を求める動向が一層強まっていることも、

明らかな事実である。

 

しかしながら、本件当時における酒税の国税収入全体に占める割合、

その収入総額、販売代金中の酒税比率等の諸状況に照らすと、

酒税の重要性が酒類販売業免許制自体を維持することの

合理性を失わせるまでに低下するに至っていたとは

いえないものと考えられる。

 

したがって、本件当時において、

酒類販売業免許制自体を存続させていたことが、

前記のような立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので

著しく不合理であるとまでは断定し難いところであり、

酒類販売業免許制を定めた酒税法九条一項及び

その罰則を定めた同法五六条一項一号の各規定が

憲法二二条一項に違反するものということはできない。

 

以上は、当裁判所の判例(最高裁昭和三一年(あ)

第一〇七一号同三七年二月二八日大法廷判決・

刑集一六巻二号二一二頁、最高裁昭和四五年(あ)第二三号

同四七年一一月二二日大法廷判決・刑集二六巻九号五八六頁、

前記最高裁昭和五〇年四月三〇日大法廷判決、

前記最高裁昭和六〇年三月二七日大法廷判決)の趣旨に徴して

明らかなところというべきであり

(最高裁昭和六三年(行ツ)第五六号平成四年一二月一五日第三小法廷判決・

民集四六巻九号二八二九頁参照)、所論はいずれも理由がない。

 

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