懲罰的損害賠償を命じた外国裁判所の判決について執行判決をすることの可否

(平成9年7月11日最高裁)

事件番号  平成5(オ)1762

 

最高裁判所の見解

執行判決を求める訴えにおいては、

外国裁判所の判決が民訴法二〇〇条各号に掲げる条件を

具備するかどうかが審理されるが(民事執行法二四条三項)、

民訴法二〇〇条三号は、外国裁判所の判決が

我が国における公の秩序又は善良の風俗に反しないことを条件としている。

 

外国裁判所の判決が我が国の採用していない制度に

基づく内容を含むからといって、

その一事をもって直ちに右条件を満たさないということはできないが、

それが我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と

相いれないものと認められる場合には、

その外国判決は右法条にいう公の秩序に反するというべきである。

 

(二) カリフォルニア州民法典の定める懲罰的損害賠償

(以下、単に「懲罰的損害賠償」という。)の制度は、

悪性の強い行為をした加害者に対し、

実際に生じた損害の賠償に加えて、

さらに賠償金の支払を命ずることにより、加害者に制裁を加え、かつ、

将来における同様の行為を抑止しようとするものであることが明らかであって、

その目的からすると、むしろ我が国における罰金等の刑罰と

ほぼ同様の意義を有するものということができる。

 

これに対し、我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は、

被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、

加害者にこれを賠償させることにより、

被害者が被った不利益を補てんして、

不法行為がなかったときの状態に回復させることを

目的とするものであり(最高裁昭和六三年(オ)第一七四九号

平成五年三月二四日大法廷判決・

民集四七巻四号三〇三九頁参照)、加害者に対する制裁や、

将来における同様の行為の抑止、

すなわち一般予防を目的とするものではない。

 

もっとも、加害者に対して損害賠償義務を課することによって、

結果的に加害者に対する制裁ないし

一般予防の効果を生ずることがあるとしても、

それは被害者が被った不利益を回復するために

加害者に対し損害賠償義務を負わせたことの

反射的、副次的な効果にすぎず、加害者に対する

制裁及び一般予防を本来的な目的とする懲罰的損害賠償の制度とは

本質的に異なるというべきである。我が国においては

加害者に対して制裁を科し、将来の同様の行為を抑止することは、

刑事上又は行政上の制裁にゆだねられているのである。

 

そうしてみると、不法行為の当事者間において、被害者が加害者から、

実際に生じた損害の賠償に加えて、制裁及び

一般予防を目的とする賠償金の支払を受け得るとすることは、

右に見た我が国における不法行為に基づく

損害賠償制度の基本原則ないし基本理念と相いれないものであると認められる。

 

(三) したがって、本件外国判決のうち、

補償的損害賠償及び訴訟費用に加えて、

見せしめと制裁のために被上告会社に対し

懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分は、

我が国の公の秩序に反するから、

その効力を有しないものとしなければならない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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