所得税更正処分取消請求事件

(平成13年7月13日最高裁)

事件番号  平成12(行ツ)13

 

最高裁判所の見解

民法上の組合の組合員が組合の事業に従事したことにつき

組合から金員の支払を受けた場合,当該支払が組合の事業から

生じた利益の分配に該当するのか,所得税法28条1項の

給与所得に係る給与等の支払に該当するのかは,

当該支払の原因となった法律関係についての組合及び

組合員の意思ないし認識,当該労務の提供や支払の

具体的態様等を考察して客観的,実質的に判断すべきものであって,

組合員に対する金員の支払であるからといって

当該支払が当然に利益の分配に該当することになるものではない。

 

また,当該支払に係る組合員の収入が給与等に該当するとすることが

直ちに組合と組合員との間に矛盾した

法律関係の成立を認めることになるものでもない。

 

これを本件についてみると,本件組合から上告人ら

専従者に支払われた労務費は,雇用関係にあることが明らかな

一般作業員に対する労務費と同じく,作業時間を基礎として

日給制でその金額が決定されており,

一般作業員との日給の額の差も

作業量,熟練度の違い等を考慮しするのと同じく,

原則として毎月所定の給料日に現金を

手渡す方法が採られていたというのである。

 

他方で,組合員に対する出資口数に応じた現金配当は平成3年度に

一度行われたことがあるにすぎない。

 

これらのことからすれば,本件組合及びその組合員は,

専従者に対する上記労務費の支払を雇用関係に基づくものと

認識していたことがうかがわれ,専従者に対する労務費は,

本件組合の利益の有無ないしその多寡とは無関係に決定され,

支払われていたとみるのが相当である。

 

また,上告人ら専従者は,一般作業員と同じく,

管理者の作業指示に従って作業に従事し,作業時間が

タイムカードによって記録され,その作業内容も一般作業員と

基本的に異なるところはなく,違いがあるとしても

それは熟練度等の差によるものであったというのであるから,

上告人ら専従者は,一般作業員と同じ立場で,

本件組合の管理者の指揮命令に服して

労務を提供していたとみることができる。

 

さらに,本件組合の目的であるりんご生産事業について,

設立当初は各組合員がその出資口数に応じて出役する

責任出役義務制が採られていたのが,

雇用労力を用いる方が合理的であるとの認識に基づき,

管理者,専従者及び一般作業員が生産作業を行う形態に改められた

経緯等にもかんがみると,責任出役義務制が廃止された後は,

組合員である専従者の労務の提供も,

一般作業員のそれと同様のものと扱われたと評価することができる。

 

これらの事実関係からすれば,上告人ら専従者が

一般作業員とは異なり組合員の中から本件組合の総会において選任され,

りんご生産作業においては管理者と一般作業員との間にあって

管理者を補助する立場にあったことや,

本件組合の設立当初においては

責任出役義務制が採られていたことなどを考慮しても,

上告人が本件組合から労務費として支払を受けた本件収入をもって

労務出資をした組合員に対する組合の

利益の分配であるとみるのは困難というほかなく,

本件収入に係る所得は給与所得に該当すると解するのが相当である。

 

以上と異なる原審の前記判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,

本件については原判決を職権で破棄するのが相当である。

 

そして,以上によれば,上告人の本訴請求を認容した

第1審判決は正当であるから,

これに対する被上告人の控訴を棄却することとする。

 

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