所得税法28条2項,所得税法33条3項,所得税法34条2項

(平成17年11月8日最高裁)

事件番号  平成14(行ヒ)112

 

この裁判は、

昭和62年の非上場株式の取引に係る個人の所得金額の計算に当たり

同株式を1株当たりの純資産価額を基に評価する場合に資産の時価と

帳簿価額との評価差額に対する法人税額等相当額を控除して

純資産価額を計算すべきであるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

所得税法施行令84条1項は,発行法人から

有利な発行価額による新株を取得する権利を与えられた場合における

当該権利に係る所得税法36条2項の収入金額とすべき価額は,

当該権利に基づく払込みに係る期日における新株の価額から

当該新株の発行価額を控除した金額によると規定している。

 

そして,所得税基本通達(平成10年課法8-2,

課所4-5による改正前のもの)

23~35共-9(4)は,上記期日における新株の価額について,

当該新株が非上場株式で気配相場や売買実例がなく,

類似法人比準方式により評価することができない場合には,

上記期日又はこれに最も近い日における発行法人の

1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると

認められる価額とする旨を定めている。同通達の定めは,

株式の低額譲受けに係る給与所得の金額及び株式の譲渡に係る

譲渡所得の金額を計算するために株式の価額を評価する場合において,

当該株式が非上場株式で気配相場や売買実例がなく,

類似法人比準方式により評価することが

できないときにも妥当するものと解されるが,

このような一般的,抽象的な評価方法の定めのみに基づいて

株式の価額を算定することは困難である。

 

他方,評価通達の定める非上場株式の評価方法は,

相続又は贈与における財産評価手法として

一般的に合理性を有し,課税実りの純資産価額の算定方式を

所得税課税においてそのまま採用すると,

相続税や贈与税との性質の違いにより

課税上の弊害が生ずる場合には,

これを解消するために修正を加えるべきであるが,

このような修正をした上で同通達所定の1株当たりの

純資産価額の算定方式にのっとって算定された価額は,

一般に通常の取引における当事者の合理的意思に合致するものとして,

所得税基本通達(平成10年課法8-2,

課所4-5による改正前のもの)23~35共-9(4)にいう

「1株当たりの純資産価額等を参酌して

通常取引されると認められる価額」

に当たるというべきである。

 

ところで,評価通達(平成2年直評12,

直資2-203による改正前のもの)185が,

1株当たりの純資産価額の算定に当たり

法人税額等相当額を控除するものとしているのは,

個人が財産を直接所有し,支配している場合と,

個人が当該財産を会社を通じて間接的に所有し,

支配している場合との評価の均衡を図るためであり,

評価の対象となる会社が現実に解散されることを

前提としていることによるものではない。

 

したがって,営業活動を順調に行って存続している

会社の株式の相続及び贈与に係る相続税及び贈与税の課税においても,

法人税額等相当額を控除して当該会社の1株当たりの

純資産価額を算定することは,一般的に合理性があるものとして,

課税実務の取扱いとして定着していたものである。

 

所得税基本通達については平成12年課資3-8,

課所4-29による改正により,法人税基本通達については

平成12年課法2-7による改正により,

所得税及び法人税の課税における1株当たりの純資産価額の評価に当たり

法人税額等相当額を控除しないことが規定されるに至ったのであって,

それらの改正前の昭和62年当時に,

評価通達(平成2年直評12,直資2-203による改正前のもの)185が

定める1株当たりの純資産価額の算定方式のうち

法人税額等相当額を控除する部分が,

所得税課税における評価に当てはまらないということを

関係通達から読み取ることは,

一般の納税義務者にとっては不可能である。

 

取引相場のない株式の取引は,法人税額等相当額を控除した

純資産価額を上回る価額でされることもあり得るが,

一般にその取引の当事者は上記関係通達の定める

評価方法に関心を有するものであり,

その評価方法が取引の実情に影響を与え得るものであったことは否定し難く,

これとかけ離れたところに取引通念があったということはできない。

 

したがって,営業活動を順調に行っている会社の株式であっても,

法人税額等相当額を控除して算定された1株当たりの純資産価額は,

昭和62年当時において,一般には通常の取引における

当事者の合理的意思に合致するものとして,

所得税基本通達(平成10年課法8-2,

課所4-5による改正前のもの)23~35共-9(4)にいう

「1株当たりの純資産価額等を参酌して

通常取引されると認められる価額」

に当たるというべきである。

 

このように解釈される上記「1株当たりの純資産価額等を参酌して

通常取引されると認められる価額」によって株式の価額を評価して

所得の金額を計算することは,

所得税法及び所得税法施行令の解釈として

合理性を有するということができる。

 

そうであるとすると,昭和62年3月又は5月における

上告会社及びEの1株当たりの純資産価額の評価において,

両社が順調に営業を行っていることのみを根拠として,

法人税額等相当額を控除することが不合理であって

通常の取引における当事者の合理的意思に

合致しないものであるということはできず,

他に上記控除が上記の評価において著しく

不合理な結果を生じさせるなど課税上の弊害をもたらす

事情がうかがわれない本件においては,

これを控除して1株当たりの純資産価額を評価すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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