所有権移転仮登記抹消登記手続

(平成6年9月8日最高裁)

事件番号  平成3(オ)1817

 

最高裁判所の見解

地方公共団体が、買主として、使用目的を定めないで

農地の売買契約を締結した後に、

当該農地を農地法五条一項四号、農地法施行規則七条六号所定の

用途に供することを確定したときには、その時点において、

売買は、都道府県知事の許可を経ないで効力を

生ずるものと解するのが相当である。

 

けだし、農地法が農地に係る権利の移転等について原則として

都道府県知事の許可を要するとしながら、

農地法施行規則七条六号に定める要件を備える場合に例外として

許可を不要としたのは、公共の利益となる事業のための

農地の利用に係る権利の移転等については規制をする

必要がないと認められることによるものであって、

同条六号に定める要件を具備するに至ったのが

売買契約の成立後であったとしても、

規制の必要性が認められないことに変わりはないからである。

 

そして、農地の買主が売主に対して有する都道府県知事に対する

許可申請協力請求権の時効による消滅の効果は、

時効期間の経過後に売主が右請求権についての

時効を援用したときに初めて確定的に生ずるものであるから

(最高裁昭和五九年(オ)第二一一号同六一年三月一七日第二小法廷判決・

民集四〇巻二号四二〇頁)、農地の買主が売主に対して

有する都道府県知事に対する許可申請協力請求権の

消滅時効期間が経過しても、その後に買主である地方公共団体が

当該農地を農地法施行規則七条六号所定の用途に

供することを確定した場合には、買主に所有権が移転し、

その後にされた時効の援用は効力を生じないと解すべきである。

 

これを本件についてみるに、農地法五条一項四号、

農地法施行規則七条六号によれば、市町村が学校教育法一条に規定する

学校の敷地に供するため、その区域内にある農地を取得する場合には、

農地法所定の都道府県知事の許可を要しないから、

上告人が昭和六二年五月ころ本件土地一を中学校敷地として

使用することを確定した後に、被上告人により

本件許可申請協力請求権の消滅時効の援用がされたのであれば、

本件売買は、右使用目的が確定した時点において

当然に効力を生じ、被上告人は本件土地一の

所有権を喪失するに至ったというべきであって、

本件許可申請協力請求権の時効消滅は

問題とする余地がないこととなる。

 

したがって、被上告人の消滅時効の援用と

本件土地一の使用目的の確定の各時点の先後関係について

審理判断しなかった原判決には、法令の解釈適用の誤り、

ひいては審理不尽、理由不備の違法があるものというべきであり、

この違法をいう論旨は理由があるから、

原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。

 

そして、本件については、更に審理を尽くさせる必要があるから、

これを原審に差し戻すのが相当である。

 

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