所有権移転登記抹消登記手続等請求事件

(平成15年6月13日最高裁)

事件番号  平成14(受)1008

 

最高裁判所の見解

(1) 前記原審の認定の事実によれば,上告人は,

地目変更などのために利用するにすぎないものと信じ,

Eに白紙委任状,本件土地建物の登記済証,

印鑑登録証明書等を交付したものであって,

もとより本件第1登記がされることを承諾していなかったところ,

上告人がEに印鑑登録証明書を交付した

3月9日の27日後の4月5日に

本件第1登記がされ,その10日後の同月15日に本件第2登記が,

その13日後の同月28日に本件第3登記がされるというように,

接着した時期に本件第1ないし第3登記がされている。

 

(2) また,記録によれば,上告人は,工業高校を卒業し,

技術職として会社に勤務しており,これまで

不動産取引の経験のない者であり,不動産売買等を業とする

Dの代表者であるEからの言葉巧みな申入れを信じて,

同人に上記(1)の趣旨で白紙委任状,

本件土地建物の登記済証,印鑑登録証明書等を交付したものであって,

上告人には,本件土地建物につき虚偽の権利の帰属を示すような外観を

作出する意図は全くなかったこと,

上告人が本件第1登記がされている事実を

知ったのは5月26日ころであり,被上告人らが

本件土地建物の各売買契約を行った時点において,

上告人が本件第1登記を承認していたものでないことはもちろん,

同登記の存在を知りながらこれを放置していたものでもないこと,

Eは,白紙委任状や登記済証等を交付したことなどから

不安を抱いた上告人やその妻からの度重なる問い合わせに対し,

言葉巧みな説明をして言い逃れをしていたもので,

上告人がDに対して本件土地建物の

所有権移転登記がされる危険性について

Eに対して問いただし,そのような登記がされることを防止するのは

困難な状況であったことなどの事情をうかがうことができる。

 

(3) 仮に上記(2)の事実等が認められる場合には,

これと上記(1)の事情とを総合して考察するときは,

上告人は,本件土地建物の虚偽の権利の帰属を示す外観の作出につき

何ら積極的な関与をしておらず,

本件第1登記を放置していたとみることもできないのであって,

民法94条2項,110条の法意に照らしても,

Dに本件土地建物の所有権が移転していないことを

被上告人らに対抗し得ないとする事情はないというべきである。

 

そうすると,上記の点について十分に審理をすることなく,

上記各条の類推適用を肯定した原審の判断には,

審理不尽の結果法令の適用を誤った違法があるといわざるを得ず,

論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。

 

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