投資信託及び投資法人に関する法律2条4項

(平成18年12月14日最高裁)

事件番号  平成17(受)1461

 

この裁判では、

証券投資信託であるMMF(マネー・マネージメント・ファンド)の受益者が

解約実行請求をした場合と受益者の受益証券を

販売した会社に対する一部解約金支払請求権について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

本件受益証券に係る販売会社である被上告人は,受益者に対し,

B社から一部解約金の交付を受けることを条件として,

一部解約金の支払義務を負い,受益者は,被上告人に対し,

上記条件の付いた一部解約金支払請求権を有するものと解するのが相当であり,

そして,受益者の債権者は,受益者の被上告人に対する上記条件付きの

一部解約金支払請求権を差し押えた上,

民事執行法155条1項に定める取立権の行使として,

被上告人に対して解約実行請求の意思表示をすることができ,

この解約実行請求に基づくB社の一部解約の実行により,

B社から一部解約金が被上告人に交付されたときに,

被上告人から上記一部解約金支払請求権を

取り立てることができるものと解するのが相当である。

 

ア 本件約款の定めによると,本件信託契約に基づき,

受益者は,B社に対し,解約実行請求をすることができ,

B社は,解約実行請求があった場合には,

受益者に対し一部解約を実行した上,原則として

解約実行請求を受け付けた日の翌営業日に販売会社の営業所等において

一部解約金を支払う義務を負うものと解される。

 

この義務は,本件信託契約の委託者であり,

本件受益証券の発行者であるB社が負うものであって,

本件信託契約の当事者ではない被上告人ら販売会社の義務ではない。

 

そして,一部解約の効力は,B社が一部解約を実行することによって

初めて生ずるものであり,受益者による解約実行請求の意思表示によって

当然に生ずるものではないと解される。

 

なお,本件委託契約は,被上告人が,

本件受益証券に係る解約実行請求の受付や

一部解約金の支払等に関する業務を引き受けることを,

B社との間で合意した業務委託契約にすぎないから,

これによって被上告人と受益者との間に

一部解約金の支払についての権利義務関係が生ずるものではない。

 

イ しかしながら,本件取引規定は,

被上告人と受益者との間の権利義務関係を定めるものとして,

受益証券等の解約の申込みは被上告人の店舗で受け付けること,

解約金は取扱商品ごとに定められた日に被上告人の店舗にある

受益者の指定預金口座に入金することを定めており,

本件受益証券の内容について定める本件約款においても,

受益者による解約実行請求はB社又は

販売会社に対して行うものとされているから,

本件取引規定に基づき,被上告人は,受益者に対する関係で,

受益者から本件受益証券について解約実行請求を受けたときは,

これを受け付けてB社に通知する義務及びこの通知に従って

一部解約を実行したB社から一部解約金の交付を受けたときに受益者に

一部解約金を支払う義務を負うもの,換言すれば,被上告人は,

受益者に対し,B社から一部解約金の交付を受けることを条件として

一部解約金の支払義務を負い,受益者は,被上告人に対し,

上記条件の付いた一部解約金支払請求権を有するものと解するのが相当である。

 

なお,本件約款によれば,解約実行請求は

本件受益証券をもって行うものとされているところ,

販売会社の販売に係る本件受益証券は,当該販売会社が保護預りしており,

記録によれば,保護預りに係る本件受益証券は,

受託者であるC信託銀行に大券をもって混蔵保管されていて,

受益者に本件受益証券が交付されることは

予定されていないことがうかがわれるから,

本件約款上は,直接B社に対して解約実行請求を行う方法も認められているが,

事実上,解約実行請求は販売会社を通じて行う方法に限定されているのであって,

このような取扱いの実態に照らしても,

販売会社である被上告人と受益者との間には

上記のような権利義務関係があるものと認めるのが相当である。

 

そして,上記のとおり,本件受益証券は受益者に

交付されることが予定されていないことからすれば,

上記のような条件付きの一部解約金支払請求権は,

債権差押えの対象となるものと解すべきであり,

本件被差押債権は,AがB社から購入した

本件受益証券に係るAの被上告人に対するこのような条件付きの

一部解約金支払請求権であるということができる。

 

金銭債権を差し押さえた債権者は,民事執行法155条1項に基づき,

自己の名で被差押債権の取立てに必要な範囲で債務者の

一身専属的権利に属するものを除く

一切の権利を行使することができる(最高裁平成10年(受)

第456号同11年9月9日第一小法廷判決・民集53巻7号1173頁)。

 

前記のとおり,本件受益証券に係る受益者の被上告人に対する

一部解約金支払請求権は,B社から被上告人に対する

一部解約金の交付を条件として効力を生ずる権利であるから,

解約実行請求をすることは,一部解約金支払請求権の取立てのために

必要不可欠な行為であり,取立ての範囲を超えるものでもない。

 

したがって,受益者の被上告人に対する

一部解約金支払請求権を差し押さえた債権者は,

取立権の行使として,被上告人に対して

解約実行請求の意思表示をすることができ,

B社によって一部解約が実行されて被上告人が

一部解約金の交付を受けたときは,被上告人から

上記一部解約金支払請求権を

取り立てることができるものと解するのが相当である。

 

(2) Dは,本件訴状の送達をもって被上告人に対して

本件解約実行請求の意思表示を行ったものであり,これは,

差押債権者の取立権に基づくものとして,

被上告人に対してB社に対する

本件解約実行請求の通知義務を生じさせるものということができる。

 

ところが,前記事実関係によれば,

被上告人は本件解約実行請求があったことを

B社に通知しておらず,そのためB社も本件解約実行請求に基づく

一部解約の実行をしていないことがうかがわれる。

 

前記のとおり,B社は,解約実行請求があった場合には,

受益者に対し,一部解約を実行して

一部解約金を支払う義務を負っているが,

被上告人が上記通知をしなければ,

B社による一部解約の実行及び一部解約金の被上告人への交付によって

前記条件が成就することはなく,被上告人は上告人らに対して

一部解約金の支払義務を負わないことになるというべきであるから,

被上告人が上記通知をしないことについて

民法130条所定の要件が充足されるのであれば,

同条により前記条件が成就したものとみなされ,

被上告人は,上告人らに対して本件解約実行請求に基づく

一部解約金の支払義務を負う余地がある。

 

(3) 以上によれば,Aが被上告人に対して前記のような条件の付いた

一部解約金支払請求権を有することを認めず,

上告人らが同請求権を差し押さえ,取立権の行使として

被上告人に対して解約実行請求の

意思表示をすることも認められないかのように判示し,

これを前提に上告人らの民法130条に基づく

主張を排斥した原審の判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

論旨はこの趣旨をいう限度において理由があり,

原判決は破棄を免れない。そして,同条に基づく

主張の当否等について更に審理を尽くさせるため,

本件を原審に差し戻すこととする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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