抗告訴訟の対象

(平成17年10月25日最高裁)

事件番号  平成15(行ヒ)320

 

この裁判では、

医療法(平成12年法律第141号による改正前のもの)

30条の7の規定に基づき

都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う

病床数削減の勧告と抗告訴訟の対象について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

(1) 医療法は,病院を開設しようとするときは,

開設地の都道府県知事の許可を受けなければならない旨

定めているところ(7条1項),都道府県知事は,

一定の要件に適合する限り,病院開設の許可を

与えなければならないが(同条4項),

医療計画の達成の推進のために特に必要がある場合には,

都道府県医療審議会の意見を聴いて,病院開設申請者等に対し,

病院の開設,病床数の増加等に関し勧告することができる(30条の7)。

 

そして,医療法上は,上記勧告に従わない場合にも,

そのことを理由に病院開設の不許可等の不利益処分がされることはない。

 

他方,健康保険法43条ノ3第1項は,保険医療機関の指定は,

病院等の開設者の申請があるものについて都道府県知事が行う旨を規定し,

同条4項2号は,申請に係る病床の種別に応じ,

医療法7条の2第1項に規定する地域における保険医療機関の病床の数が,

その指定により同法30条の3第1項に規定する医療計画において

定める必要病床数を勘案して厚生大臣の定めるところにより

算定した数を超えることになると認める場合

(その数を既に超えている場合を含む。)であって,

当該病院の開設者等が同法30条の7の規定による

都道府県知事の勧告を受けてこれに従わないときには,

申請に係る病床の全部又は一部を除いて

指定を行うことができる旨を規定している。

 

平成10年法律第109号による改正前の健康保険法43条ノ3には,

上記の規定はなく,同条2項が,都道府県知事は

「保険医療機関等トシテ著シク不適当ト認ムルモノナルトキ」には

保険医療機関等の指定を拒むことができる旨を規定しており,

医療法30条の7の規定に基づき

都道府県知事が勧告を行ったにもかかわらず,

これに従わずに病院開設がされ,

保険医療機関の指定申請がされた場合には,

前記の「保険医療機関等トシテ著シク不適当ト認ムルモノナルトキ」

に該当するものとして,保険医療機関の指定を

拒否することができるという取扱いがされていた。

 

これを踏まえて,健康保険法43条ノ3第4項2号は,

医療法30条の7の規定に基づく病院の開設に関する

勧告を受けた者がそれに従わないときには,

必ずしも申請どおりには保険医療機関の指定が

得られないことを明らかにする趣旨で設けられたものと解される。

 

(2) 上記の医療法及び健康保険法の規定の内容や

その運用の実情に照らすと,

医療法30条の7の規定に基づく勧告で開設申請に係る

病院の病床数の削減を内容とするものは,

医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる

行政指導として定められてはいるけれども,当該勧告を受けた者に対し,

これに従わない場合には,相当程度の確実さをもって,

病院を開設しても削減を勧告された病床を除いてしか

保険医療機関の指定を受けることができなくなるという

結果をもたらすものというべきである。

 

そして,いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては,

健康保険,国民健康保険等を利用しないで

病院を受診する者はほとんどなく,

保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院が

ほとんど存在しないことは公知の事実であるから,

削減を勧告された病床を除いてしか

保険医療機関の指定を受けることができない場合には,

実際上当該病床を設けることができない不利益を受けることになる。

 

このような医療法30条の7の規定に基づく

上記勧告の保険医療機関の指定に及ぼす効果及び病院経営における

保険医療機関の指定の持つ意義を併せ考えると,

この勧告は,行政事件訴訟法3条2項にいう

「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」

に当たると解するのが相当である。

 

後に保険医療機関の指定拒否処分の効力を

抗告訴訟によって争うことができるとしても,

そのことは上記の結論を左右するものではない。

 

したがって,本件勧告は,行政事件訴訟法3条2項にいう

「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」

に当たるというべきである。

 

以上と異なる見解の下に,本件訴えを却下すべきものとした

原審の判断には,判決に影響を

及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。

そして,第1審判決を取り消し,

本件を第1審に差し戻すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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