担保不動産収益執行

(平成21年7月3日最高裁)

事件番号  平成19(受)1538

 

この裁判では、

担保不動産収益執行における

担保不動産の収益に係る給付を求める権利の帰属、

抵当不動産の賃借人が,担保不動産収益執行の

開始決定の効力が生じた後に,

抵当権設定登記の前に取得した賃貸人に対する債権を自働債権とし

賃料債権を受働債権とする相殺をもって

管理人に対抗することの可否について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

(1) 担保不動産収益執行は,担保不動産から生ずる賃料等の収益を

被担保債権の優先弁済に充てることを目的として設けられた

不動産担保権の実行手続の一つであり,執行裁判所が,

担保不動産収益執行の開始決定により担保不動産を差し押さえて

所有者から管理収益権を奪い,これを執行裁判所の選任した管理人に

ゆだねることをその内容としている

(民事執行法188条,93条1項,95条1項)。

管理人が担保不動産の管理収益権を取得するため,

担保不動産の収益に係る給付の目的物は,

所有者ではなく管理人が受領権限を有することになり,

本件のように担保不動産の所有者が

賃貸借契約を締結していた場合は,

賃借人は,所有者ではなく管理人に対して賃料を

支払う義務を負うことになるが(同法188条,93条1項),

このような規律がされたのは,担保不動産から生ずる収益を確実に

被担保債権の優先弁済に充てるためであり,

管理人に担保不動産の処分権限まで

与えるものではない(同法188条,95条2項)。

 

このような担保不動産収益執行の趣旨及び管理人の権限にかんがみると,

管理人が取得するのは,賃料債権等の

担保不動産の収益に係る給付を求める権利(以下「賃料債権等」という。)自体ではなく,

その権利を行使する権限にとどまり,賃料債権等は,

担保不動産収益執行の開始決定が効力を生じた後も,

所有者に帰属しいるものと解するのが相当であり,

このことは,担保不動産収益執行の開始決定が効力を生じた後に

弁済期の到来する賃料債権等についても変わるところはない。

 

そうすると,担保不動産収益執行の開始決定の効力が生じた後も,

担保不動産の所有者は賃料債権等を受働債権とする

相殺の意思表示を受領する資格を

失うものではないというべきであるから

(最高裁昭和37年(オ)第743号同40年7月20日

第三小法廷判決・裁判集民事79号893頁参照),

本件において,本件建物の共有持分権者であり賃貸人であるAは,

本件開始決定の効力が生じた後も,本件賃料債権の債権者として

本件相殺の意思表示を受領する資格を有していたというべきである。

 

(2) そこで,次に,抵当権に基づく担保不動産収益執行の

開始決定の効力が生じた後において,担保不動産の賃借人が,

抵当権設定登記の前に取得した賃貸人に対する債権を自働債権とし,

賃料債権を受働債権とする相殺をもって

管理人に対抗することができるかという点について検討する。

 

被担保債権について不履行があったときは抵当権の効力は

担保不動産の収益に及ぶが,そのことは抵当権設定登記によって

公示されていると解される。

 

そうすると,賃借人が抵当権設定登記の前に

取得した賃貸人に対する債権については,

賃料債権と相殺することに対する賃借人の期待が

抵当権の効力に優先して保護されるべきであるから

(最高裁平成11年(受)第1345号同13年3月13日

第三小法廷判決・民集55巻2号363頁参照),

担保不動産の賃借人は,抵当権に基づく

担保不動産収益執行の開始決定の効力が生じた後においても,

抵当権設定登記の前に取得した

賃貸人に対する債権を自働債権とし,

賃料債権を受働債権とする相殺をもって

管理人に対抗することができるというべきである。

 

本件において,上告人は,Aに対する本件保証金返還債権を

本件抵当権設定登記の前に取得したものであり,

本件相殺の意思表示がされた時点で自働債権である

上告人のAに対する本件保証金返還残債権と受働債権である

Aの上告人に対する本件賃料債権は相殺適状にあったものであるから,

上告人は本件相殺をもって管理人である

被上告人に対抗することができるというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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