捜査段階において弁護人依頼権の侵害があった旨の主張に関する控訴審の審理に言及する職権判断が示された事例

(平成6年5月24日最高裁)

事件番号  平成5(あ)466

 

最高裁判所の見解

上告趣意のうち、被告人の捜査段階における自白は

警察官の自白すれば罰金ですます旨の約束ないし利益誘導により、

黙秘権を侵害して得られたものであるとして

憲法違反、判例違反をいう点は、記録を調べても、

所論のような事跡は認められないから、

その前提を欠き、その余の点は、憲法違反、判例違反を

いう部分を含め、実質はすべて単なる

法令違反、事実誤認の主張であって、

いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

 

なお、所論は、捜査段階において弁護人依頼権の侵害があったとして、

違憲をいい、被告人の自白には証拠能力がない旨主張するほか、

原審において、弁護人が同旨の事実を主張し、

被告人もこれに沿う供述をしているのに、

原判決がこの点について何らの判断を示していないのは

判断遺脱である旨主張する。記録によれば、

被告人が本件公務執行妨害、傷害の現行犯人として

逮捕され警察官から弁解を録取された際、

弁護人の選任のため弁護士会への連絡を

求めたことが明らかであるところ、

被告人の右要求に対し警察官が弁護士会に

連絡をしたのかどうかについては、証拠資料が見当たらず、

この点に関して、原審は、特段の事実調べをすることなく、

何らの判断も示していない。

 

このような場合、控訴審裁判所としては、

被疑者の有する弁護人依頼権が憲法の規定によって保障されたものであって、

それが侵害された場合には、

被疑者の供述の証拠能力にも影響を及ぼすこどがあることにかんがみ、

職権によってでも右侵害の有無につき事実調べをして

事実関係を明らかにする必要のある場合があることも否定できない。

 

しかし、本件においては、弁護士会への

連絡の有無の点についての審理に問題がないとはいえないとしても、

捜査段階における被告人の自白を除く

第一審判決の挙示するその余の関係証拠によって、

本件罪となるべき事実を肯認することができるものと認められるから、

結局、所論の点は原判決の結論に

影響しないものというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク