接見妨害に対する慰謝料請求事件

(平成12年3月17日最高裁)

事件番号  平成5(オ)1485

 

最高裁判所の見解

検察官、検察事務官又は司法警察職員(以下「捜査機関」という。)は、

弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により

弁護人となろうとする者(以下「弁護人等」という。)から

被疑者との接見又は書類若しくは物の授受(以下「接見等」という。)の

申出があったときは、原則としていつでも接見等の機会を

与えなければならないのであり、

捜査機関が現に被疑者を取調べ中である場合など、

右接見等を認めると取調べの中断等により

捜査に顕著な支障が生ずる場合に限り、

接見等のための日時、場所及び時間を指定することができるが、

その場合には、弁護人等と協議してできる限り

速やかな接見等のための日時等を指定し、

被疑者が弁護人等と防御の準備をすることができるような

措置を採らなければならないものと解すべきである

(最高裁平成五年(オ)第一一八九号同一一年三月二四日大法廷判決・

民集五三巻三号五一四頁参照)。

 

ところで、弁護人等から接見等の申出を受けた者が、

接見等のための日時等の指定につき権限のある

捜査機関(以下「権限のある捜査機関」という。)でないため、

右指定の要件の存否を判断できないときは、

権限のある捜査機関に対して右の申出のあったことを連絡し、

その具体的措置について指示を受ける等の手続を採る必要があり、

こうした手続を要することにより、

弁護人等が待機することになり又はそれだけ

接見等が遅れることがあったとしても、

それが合理的な範囲内にとどまる限り、

許容されているものと解するのが相当である。

 

そして、右接見等の申出を受けた者が右合理的な

時間の範囲内で対応するために採った権限のある

捜査機関に対する連絡等の措置が

社会通念上相当と認められるときは、

当該措置を採ったことを違法ということはできない

(最高裁昭和六一年(オ)第八五一号

平成三年五月三一日第二小法廷判決・

裁判集民事一六三号四七頁参照)。

 

これを本件について見ると、原審の適法に確定した事実は、

次のとおりである。

 

上告人は、昭和六一年五月一日午前八時四〇分ころ、

接見しようとする被疑者が勾留されている

愛知県警察本部の総務部留置管理課に赴き、

留置主任官の職務代行者であるE留置係員に対して

右被疑者との接見の申出をした。同係員は、

権限のある捜査機関であるF検察官から被疑者と

弁護人等の接見等の日時等を別に発すべき

指定書(いわゆる具体的指定書)のとおり指定する旨を

記載した接見等に関する指定書(いわゆる一般的指定書)が

送付されていたため、上告人が具体的指定書を

所持していないことを確認した上、

同検察官の指示を受けるために、

直ちに名古屋地方検察庁に電話をした。

 

しかし、同検察官が登庁していなかったため、

引き続く午前八時五五分ころ及び午前九時二〇分ころの

三度にわたる電話によっても、連絡が取れなかった。

 

ようやく、午前九時二五分ころに至り、

権限のある捜査機関である同検察庁のG公安部長と連絡が取れたので、

同係員は上告人と電話を替わり、

その後は上告人と同部長とが接見について協議をした。

 

右の事実関係の下においては、

E留置係員が右接見申出からG公安部長と

連絡が取れるまでの間に採った措置は、

社会通念上相当と認められるものというべきであり、

同係員がその間上告人を待機させたことに違法があるとはいえない。

 

これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、

原判決に所論の違法はない。論旨は、

独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、

採用することはできない。

 

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