損害賠償,民訴法260条2項による仮執行の原状回復請求事件

(平成16年4月27日最高裁)

事件番号  平成13(受)1759

 

最高裁判所の見解

雇用者の安全配慮義務違反によりじん肺にかかったことを理由とする

損害賠償請求権の消滅時効は,じん肺法所定の管理区分についての

最終の行政上の決定を受けた時から進行すると解すべきであるが

(最高裁平成元年(オ)第1667号同6年2月22日

第三小法廷判決・民集48巻2号441頁),

じん肺によって死亡した場合の損害については,

死亡の時から損害賠償請求権の消滅時効が

進行すると解するのが相当である。

 

なぜなら,その者が,じん肺法所定の管理区分についての

行政上の決定を受けている場合であっても,その後,

じん肺を原因として死亡するか否か,

その蓋然性は医学的にみて不明である上,その損害は,

管理二~四に相当する病状に基づく各損害とは

質的に異なるものと解されるからである。

 

これと同旨の原審の判断は,正当として

是認することができ,論旨は採用することができない。

 

3 同第3点について

論旨は,じん肺法所定の管理二の行政上の決定を受けた後,

10年以上を経過してからじん肺により死亡した元従業員に関し,

管理二に相当する病状に基づく損害賠償請求権は,

時効により消滅しているから,認容すべき慰謝料額は,

じん肺による死亡に基づく損害の慰謝料相当額から

管理二に相当する病状に基づく損害の慰謝料相当額を

控除した金額とすべきであるというものである。

 

そこで,この点について判断するに,

原審の確定した事実関係の下で,原審は,

当該元従業員の損害を,管理二に相当する病状に基づく損害とは

別個のものであるとして,これを,

じん肺による死亡それ自体に係る損害として評価し,

その額を定めたものであり,このような場合についてまで,

上記の消滅時効に係る慰謝料相当額を

控除しなければならないものではない。

 

所論の点に関する原審の判断は,

正当として是認することができ,

論旨は採用することができない。

 

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