支出負担行為,支出命令,支出についての監査請求期間の始期

(平成14年7月16日最高裁)

事件番号  平成11(行ヒ)131

 

最高裁判所の見解

(1) 住民監査請求は,財務会計上の行為又は怠る

事実を対象として行われるものであるところ,

行為についての監査請求は,当該行為のあった日又は

終わった日から1年を経過したときは,

これをすることができないものとされている

(地方自治法242条2項本文)。

 

そして,ここにいう当該行為とは,

具体的な個々の財務会計上の行為をいうものと解される。

 

(2) 公金の支出は,具体的には,支出負担行為

(支出の原因となるべき契約その他の行為)及び

支出命令がされた上で,支出(狭義の支出)がされることによって

行われるものである(地方自治法232条の3,232条の4第1項)。

 

これらのうち支出負担行為及び支出命令は当該地方公共団体の長の権限に

属するのに対し,支出は出納長又は収入役の権限に属するのであり,

そのいずれについてもこれらの者から

他の職員に委任等により各別に権限が委譲されることがある。

 

また,これらの行為に適用される実体上,

手続上の財務会計法規の内容も同一ではない。

 

このように,これらは,公金を支出するために行われる

一連の行為ではあるが,互いに独立した

財務会計上の行為というべきものである。

 

そして,公金の支出の違法又は不当を問題とする監査請求においては,

これらの行為のいずれを対象とするのかにより,

監査すべき内容が異なることになるのであるから,

 

これらの行為がそれぞれ監査請求の対象事項となるものである。

もっとも,公金の支出を構成するこれらの行為を併せて

監査請求の対象とすることも許され,

これらを明確に区別しないでされた監査請求が

対象事項の特定を欠き不適法となるものではないが,

これらにつき各別に監査請求をすることが

できることはいうまでもないところである。

 

以上によれば,支出負担行為,支出命令及び支出については,

地方自治法242条2項本文所定の監査請求期間は,

それぞれの行為のあった日から各別に計算すべきものである。

 

(3) 本件は前記旅費等につき支出負担行為兼支出命令をした職員である

上告人らに対し損害賠償請求をする住民訴訟であるから,

これに前置すべき監査請求は各支出負担行為兼支出命令のあった日から

1年以内にこれをしなければならないところ,前記のとおり,

被上告人は,その日から1年を経過した後に

監査請求をしたというのである。

 

そうすると,本件の監査請求は,

請求期間を経過した後にされたものというほかはない。

そして,被上告人は平成8年2月13日には上記旅費等の存在及び

内容を知ったというのであるから,その日を基準にしても6箇月経過後にされた

上記監査請求には,地方自治法242条2項ただし書所定の

正当な理由もないことが明らかである。

 

以上のとおりであるから,本件訴えは,

適法な監査請求を経たものとはいえず,不適法というべきであり,

論旨は理由がある。これと異なる原審の前記判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,

原判決は破棄を免れない。そして,第1審判決は正当であるから,

被上告人の控訴を棄却すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク