故意によって生じた損害をてん補しない旨の自家用自動車保険普通保険約款の条項

(平成5年3月30日最高裁)

事件番号  昭和63(オ)757

 

最高裁判所の見解

傷害の故意に基づく行為により

予期しなかった死の結果を生じた場合には、

加害者は、右行為と被害者の死亡との間に

相当因果関係が認められる限り、

その死亡に伴う全損害につき損害賠償責任を負担することになるが、

このことから直ちに、傷害の故意に基づく行為により

予期しなかった死の結果を生じた場合に、

本件免責条項により免責の効果が発生するものと解するのは相当でない。

 

けだし、ここで問題となるのは、

加害者の負担すべき損害賠償責任の範囲ではなく、

本件免責条項によって保険者が例外的に

保険金の支払を免れる範囲がどのようなものとして

合意されているのかという

保険契約当事者の意思解釈の問題であるからである。

 

そして、本件免責条項にいう

「故意によって生じた損害」の解釈に当たっては、

右条項が保険者の免責という例外的な場合を

定めたものであることを考慮に入れつつ、

予期しなかった死亡損害の賠償責任の負担という結果についても

保険契約者、記名被保険者等(原因行為者)の

「故意」を理由とする免責を及ぼすのが

一般保険契約当事者の通常の意思であるといえるか、また、

そのように解するのでなければ、本件免責条項が

設けられた趣旨を没却することになるかという見地から、

当事者の合理的意思を定めるべきものである。

 

以上の見地に立って考えると、傷害と死亡とでは、

通常、その被害の重大性において質的な違いがあり、

損害賠償責任の範囲に大きな差異があるから、

傷害の故意しかなかったのに予期しなかった

死の結果を生じた場合についてまで保険契約者、

記名被保険者等が自ら招致した保険事故として

免責の効果が及ぶことはない、とするのが

一般保険契約当事者の通常の意思に沿うものというべきである。

 

また、このように解しても、

一般に損害保険契約において本件免責条項のような

免責約款が定められる趣旨、すなわち、

故意によって保険事故を招致した場合に被保険者に

保険金請求権を認めるのは保険契約当事者間の信義則あるいは

公序良俗に反するものである、

という趣旨を没却することになるとはいえない。

 

これを要するに、本件免責条項は、

傷害の故意に基づく行為により被害者を死亡させたことによる

損害賠償責任を被保険者が負担した場合については

適用されないものと解するのが相当である。

 

そうすると、原判決には、

本件免責条項の趣旨についての解釈を誤った結果、

上告人らの請求を排斥した違法があることに帰するから、

右の違法をいう論旨は理由があり、

原判決は破棄を免れない。

 

そして、前示事実関係によれば、

上告人らの請求は認容すべきものであって、

これと同旨に出た第一審判決は正当であり、

被上告人の控訴は棄却すべきものである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク