救護するための措置を執るべき法的義務

(平成20年2月28日最高裁)

事件番号  平成19(受)611

 

最高裁判所の見解

事実関係によれば,被上告人少年らは,

本件暴行が行われていることや,

加害少年らが本件暴行に及んだ経緯を知らずに

加害少年らに呼び出されて本件場所に赴いたものであって,

暴行の実行行為や共謀に加わっていないのみならず,

積極的に本件暴行を助長するような言動も

何ら行っていないことが明らかである。

 

また,前記事実関係により明らかな加害少年ら,

A,被上告人少年らそれぞれの間の関係,被上告人少年らの

年齢,本件暴行に至る経緯,本件暴行の経過等(以下,これらを併せて

「少年らの関係等」という。)にかんがみると,

被上告人少年らが加害少年らに対して恐れを抱くのも無理からぬものがあり,

被上告人Y が本件発言をしたことや,被上告人少年らが

本件暴行の間その現場に居続けたことについて,

被上告人Y や被上告人少年らを非難することは

できないものというべきである。

 

そして,前記事実関係によれば,本件発言が

本件暴行を助長したとは認められないとする原審の認定や,

Bが本件暴行を抑制することができなかったのは,

Cや被上告人少年らの前で,自らを強く見せて

格好をつけようという思いがあったからであるとしても,

被上告人少年らに本件暴行の現場に居ることが

Bの暴行をあおることになるという認識があったとは

認められないとする原審の認定は,いずれも是認し得るものである。

 

したがって,被上告人少年らにおいて,

本件暴行を制止すべき法的義務や本件暴行を抑制するため

本件現場から立ち去るべき法的義務を負っていたということはできない。

 

Aを救護するための措置を執るべき法的義務について

前記事実関係によれば,被上告人Y は,Aの様子を見て,

救急車を呼ぶことを提案したが,

Cは本件事件が警察に発覚することを恐れて

これを拒否し,結局,被上告人少年らは,

後日加害少年らから仕返しをされることを恐れ,

救急車も呼ばず,第三者に通報することもしなかったというのであるが,

上記のとおり被上告人少年らには本件暴行を

制止すべき法的義務等は認められないのであり,

被上告人少年らは,事情を知らずに本件場所に赴いたにすぎないことや,

上記の少年らの関係等にもかんがみると,

被上告人少年らにAが死ぬかもしれないという認識があったとしても,

そのことから直ちに,被上告人少年らに加害少年らからの仕返しの恐れを

克服してAを救護するための措置を執るべき

法的義務があったとまではいえない。

 

また,前記事実関係によれば,被上告人少年らは,

本件暴行後に,Cの指示により,Aの体を移動させ,

給食搬入台の壁にもたれかけさせて座らせた

(以下「本件移動行為」という。)と

いうのであるが,これも加害少年らに対する

恐れからしたことであることは明らかであるし,

前記事実関係から明らかな本件場所の状況等に照らすと,

本件移動行為によってAの発見及び救護が

格別困難になったということはできず,

同人の生命に対する危険が増大したとは認められないとの

原審の認定は是認し得るものであるから,

本件移動行為によって被上告人少年らにAを救護するための

措置を執るべき法的義務が発生したということもできない。

 

さらに,原審は,被上告人少年らがAに水を掛けたことによって

同人の生命に対する危険が増大したということはないとの認定をしているが,

この認定に疑いを生じさせるような事情も存しない。

 

したがって,被上告人少年らにおいて,救急車を呼んだり,

第三者に通報するなど,Aを救護するための措置を執るべき

法的義務を負っていたとまでいうことはできない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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