文書提出命令に対する抗告審の取消決定に対する特別抗告事件

(平成23年4月13日最高裁)

事件番号  平成22(ク)1088

 

この裁判は、

即時抗告申立書の写しを即時抗告の相手方に送付するなどして

相手方に攻撃防御の機会を与えることなく,

相手方の申立てに係る文書提出命令を取り消し,

同申立てを却下した抗告裁判所の審理手続に違法があるとして

職権により破棄された事例です。

 

最高裁判所の見解

本件文書は,本案訴訟において,抗告人が労働に従事した事実及び

労働時間を証明する上で極めて重要な書証であり,

本件申立てが認められるか否かは,本案訴訟における

当事者の主張立証の方針や裁判所の判断に

重大な影響を与える可能性がある上,

本件申立てに係る手続は,

本案訴訟の手続の一部をなすという側面も有する。

 

そして,本件においては,相手方が本件文書を

所持しているとの事実が認められるか否かは,

裁判所が本件文書の提出を命ずるか否かについての判断を

ほぼ決定付けるほどの重要性を有するものであるとともに,

上記事実の存否の判断は,当事者の主張や

その提出する証拠に依存するところが大きいことにも照らせば,

上記事実の存否に関して当事者に

攻撃防御の機会を与える必要性は極めて高い。

 

しかるに,記録によれば,相手方が提出した即時抗告申立書には,

相手方が本件文書を所持していると認めた原々決定に対する反論が

具体的な理由を示して記載され,かつ,

原々決定後にその写しが提出された書証が引用されているにもかかわらず,

原審は,抗告人に対し,同申立書の写しを送付することも,

即時抗告があったことを抗告人に知らせる措置を執ることもなく,

その結果,抗告人に何らの反論の機会を与えないまま,

上記書証をも用い,本件文書が存在していると認めるに足りないとして,

原々決定を取り消し,本件申立てを却下しているのである。

 

そして,記録によっても,抗告人において,

相手方が即時抗告をしたことを知っていた事実や,

そのことを知らなかったことにつき,

抗告人の責めに帰すべき事由があることもうかがわれない。

 

以上の事情の下においては,原審が,

即時抗告申立書の写しを抗告人に送付するなどして

抗告人に攻撃防御の機会を与えることのないまま,

原々決定を取り消し,本件申立てを却下するという抗告人に

不利益な判断をしたことは,明らかに民事訴訟における

手続的正義の要求に反するというべきであり,

その審理手続には,裁量の範囲を逸脱した

違法があるといわざるを得ない

 

そして,この違法は,裁判に影響を及ぼすことが明らかであるから,

その余の点について判断するまでもなく,原決定は破棄を免れない。

そこで,更に審理を尽くさせるため,

本件を原審に差し戻すこととする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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