文書提出命令の申立てについての決定に対して抗告の利益を有する者の範囲
(平成12年12月14日最高裁)
事件番号 平成11(許)36
最高裁判所の見解
文書提出命令は、ある事実を立証しようとする
当事者が自ら証拠を提出する代わりに、
裁判所の命令により文書の所持者にその提出を求めるものであり、
文書提出命令が発せられた場合には、これに従わない所持者は、
文書の記載に関する相手方の主張を真実と認められるなどの
不利益を受け、あるいは過料の制裁を受けることがある。
そこで、民訴法二二三条四項は、文書提出命令の申立てについての
決定に対しては、申立人とその名あて人である
所持者との間で文書提出義務の存否について争う
機会を付与したものと解される。
また、文書提出命令は、文書の所持者に対してその提出を命ずるとともに、
当該文書の証拠申出を採用する証拠決定の性質を併せ持つものであるが、
文書提出命令に対し証拠調べの必要性がないことを理由として
即時抗告をすることは許されない
(最高裁平成一一年(許)第二〇号同一二年三月一〇日第一小法廷決定・
民集五四巻三号一〇七三頁参照)。
そうすると、文書提出命令の申立てについての決定に対しては、
文書の提出を命じられた所持者及び申立てを却下された申立人以外の者は、
抗告の利益を有せず、本案事件の当事者であっても、
即時抗告をすることができないと解するのが相当である。
本件においては、抗告人は、文書の提出を命じられた所持者ではなく
本案事件における当事者にすぎず、原決定に対する不服の利益を有しないから、
本件抗告は、不適法なものとして却下を免れない。
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