時効取得の予備的主張の撤回について釈明権不行使の違法があるとされた事例

(平成7年10月24日最高裁)

事件番号  平成7(オ)9

 

最高裁判所の見解

 

本件においては、公図の記載等によれば、

本件係争部分がすべて上告人所有の

本件(一)土地に該当するとの上告人の主位的主張を認めることは

困難であるとしても、上告人及びその先代が、

上告人耕作地は一体として本件(一)土地であるとの認識の下に、

長年にわたりこれを平穏に

占有してきたことは原審の認定するところであって、

上告人が前記予備的主張を維持していれば、

上告人が時効により本件係争部分の所有権を取得したとして、

本件所有権確認請求が認容されることも十分に考えられる

(ちなみに、被上告人がD外一名から

本件(二)土地を買い受けたのが右時効完成後であるとしても、

原審の認定によれば、同土地が本件係争部分に含まれるか否かも

また確定し得ないことになるから、必ずしも上告人が

本件係争部分の時効取得を被上告人に

対抗し得ないことになるものではない。)。

 

そうすると、上告人がいったん

取得時効の予備的主張を提出しながら、

次回の口頭弁論期日に至ってこれを撤回したのは、

上告人の誤解ないし不注意に基づくものとみられるのであって、

原審としては、右撤回について上告人の真意を釈明し、

その結果、上告人が右予備的主張を維持するというのであれば、

その主張に係る取得時効の成否について更に審理を尽くした上、

本件係争部分の所有権の帰属について判断すべきものである。

 

したがって、原審が、右のような措置に出ることなく

上告人の本件所有権確認請求を棄却したのは、釈明権の行使を怠り、

ひいては審理不尽、理由不備の違法を犯したものといわなければならず、

この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

これと同旨をいう論旨は理由があり、

その余の論旨について判断するまでもなく、

原判決中上告人敗訴の部分は破棄を免れない。

 

そこで、本件については、右部分について

更に審理を尽くさせるため、これを原審に差し戻すこととする。

 

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