有価証券に表章された金銭債権を受働債権として相殺をするに当たって同有価証券を占有することの要否

( 平成13年12月18日最高裁)

事件番号  平成10(オ)730

 

最高裁判所の見解

有価証券に表章された金銭債権の債務者は,

その債権者に対して有する弁済期にある自己の金銭債権を自働債権とし,

有価証券に表章された金銭債権を受働債権として相殺をするに当たり,

有価証券の占有を取得することを要しないというべきである。

 

けだし,有価証券に表章された債権の請求に有価証券の呈示を要するのは,

債務者に二重払の危険を免れさせるためであるところ,

有価証券に表章された金銭債権の債務者が,

自ら二重払の危険を甘受して上記の相殺をすることは,

これを妨げる理由がないからである。

 

したがって,上告人が本件金融債券の占有を取得した原因行為である

本件担保供与が否認されたとしても,上告人による

本件債権元利合計10億2410万9589円を

受働債権とする相殺は有効であって,

本件債権はこれにより消滅したものというべきである。

 

以上によれば,本件債権を受働債権とする相殺が認められないとした

原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があり,

同違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

論旨は理由がある。

 

第3 その余の上告理由について

所論の点に関する原審の事実認定は,

原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り,

同事実関係の下においては,

被上告人の否認権行使を有効とするなどした原審の判断は,

正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。

 

論旨は,原審の専権に属する証拠の取捨判断,事実の認定を非難するか,

又は独自の見解に立って原判決を

論難するものにすぎず,採用することができない。

 

第4 さらに,職権をもって調査するに,

原判決には次のとおり判決に影響を及ぼすことが

明らかな法令違反があるというべきである。

 

本訴において,上告人は,

本件預金元利合計5億4063万1253円を

受働債権とする相殺の主張をしているにもかかわらず,

原審は,上記第1の2(3)のとおり,

本件預金のうち元本5億3619万1946円についてのみ相殺を認め,

利息443万9307円について相殺の判断をしておらず,

判断遺脱の違法を犯したものといわざるをえず,

同違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

そして,本件預金の利息についての相殺が有効であることは

元本についてと同様である。

 

以上要するに,被上告人の請求は,上記第1の1(3)①の

81億5349万3916円及びこれに対する

遅延損害金の支払を求める限度で理由があるものとして認容すべきであり,

その余は理由がないものとして棄却すべきである。

 

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