未成熟子がいる有責配偶者からの離婚請求が認容された事例

(平成6年2月8日最高裁)

事件番号  平成5(オ)950

 

最高裁判所の見解

民法七七〇条一項五号所定の事由による離婚請求がその事由につき

専ら又は主として責任のある一方の当事者(以下「有責配偶者」という。)から

された場合において、右請求が信義誠実の原則に照らしても

なお容認されるかどうかを判断するには、

有責配偶者の責任の態様・程度、相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び

請求者に対する感情、離婚を認めた場合における

相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子、

殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況、

別居後に形成された生活関係、たとえば夫婦の一方又は

双方が既に内縁関係を形成している場合には

その相手方や子らの状況等がしんしゃくされなければならず、

更には、時の経過がこれらの諸事情に与える

影響も考慮されなければならないものというべきである

(最高裁昭和六一年(オ)第二六〇号同六二年九月二日大法廷判決・

民集四一巻六号一四二三頁参照)。

 

したがって、有責配偶者からされた離婚請求で、

その間に未成熟の子がいる場合でも、ただその一事をもって

右請求を排斥すべきものではなく、

前記の事情を総合的に考慮して右請求が信義誠実の原則に反するとは

いえないときには、右請求を認容することができると解するのが相当である。

 

これを本件についてみるのに、前記事実関係の下においては、

上告人と被上告人との婚姻関係は既に全く破綻しており

民法七七〇条一項五号所定の事由があるといわざるを得ず、かつ、

また被上告人が有責配偶者であることは明らかであるが、

上告人が被上告人と別居してから

原審の口頭弁論終結時(平成五年一月二〇日)までには

既に一三年一一月余が経過し、双方の年齢や

同居期間を考慮すると相当の長期間に及んでおり、

被上告人の新たな生活関係の形成及び上告人の現在の行動等からは、

もはや婚姻関係の回復を期待することは困難であるといわざるを得ず、

それらのことからすると、婚姻関係を破綻せしめるに至った

被上告人の責任及びこれによって上告人が

被った前記婚姻後の諸事情を考慮しても、なお、

今日においては、もはや、上告人の婚姻継続の意思及び離婚による

上告人の精神的・社会的状態を殊更に重視して、

被上告人の離婚請求を排斥するのは相当でない。

 

上告人が今日までに受けた精神的苦痛、

子らの養育に尽くした労力と負担、今後離婚により

被る精神的苦痛及び経済的不利益の大きいことは想像に難くないが、

これらの補償は別途解決されるべきものであって、

それがゆえに、本件離婚請求を容認し得ないものということはできない。

 

そして、現在では、上告人と被上告人間の四人の子のうち

三人は成人して独立しており、残る三男Gは

親の扶養を受ける高校二年生であって未成熟の子というべきであるが、

同人は三歳の幼少時から一貫して上告人の監護の下で育てられてまもなく

高校を卒業する年齢に達しており、被上告人は上告人に

毎月一五万円の送金をしてきた実績に照らして

Gの養育にも無関心であったものではなく、

被上告人の上告人に対する離婚に伴う経済的給付も

その実現を期待できるものとみられることからすると、

未成熟子であるGの存在が本件請求の妨げになるということもできない。

 

以上と同旨に帰する原審の判断は、正当として是認することができる。

原判決に所論の違法はなく、論旨は、

右と異なる見解に立って原判決の違法をいうものであって、

採用することができない。

 

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