本人が無権代理行為の追認を拒絶した後に無権代理人が本人を相続した場合における無権代理行為の効力

(平成10年7月17日最高裁)

事件番号  平成6(オ)1379

 

最高裁判所の見解

本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、

その後に無権代理人が本人を相続したとしても、

無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。

 

けだし、無権代理人がした行為は、

本人がその追認をしなければ本人に対して

その効力を生ぜず(民法一一三条一項)、

本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が

本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は本人であっても

追認によって無権代理行為を有効とすることができず、

右追認拒絶の後に無権代理人が本人を相続したとしても、

右追認拒絶の効果に何ら影響を及ぼすものではないからである。

 

このように解すると、本人が追認拒絶をした後に

無権代理人が本人を相続した場合と本人が

追認拒絶をする前に無権代理人が本人を相続した場合とで

法律効果に相違が生ずることになるが、

本人の追認拒絶の有無によって右の相違を生ずることは

やむを得ないところであり、相続した無権代理人が

本人の追認拒絶の効果を主張することが

それ自体信義則に反するものであるということはできない。

 

これを本件について見ると、Eは、被上告人らに対し

本件各登記の抹消登記手続を求める本訴を提起したから、

Fの無権代理行為について追認を拒絶したものというべく、

これにより、Fがした無権代理行為はEに対し

効力を生じないことに確定したといわなければならない。

 

そうすると、その後に上告人らがEを相続したからといって、

既にEがした追認拒絶の効果に影響はなく、

Fによる本件無権代理行為が当然に有効になるものではない。

 

そして、前記事実関係の下においては、

その他に上告人らが右追認拒絶の効果を主張することが

信義則に反すると解すべき事情があることはうかがわれない。

 

したがって、原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があり、

右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

論旨は理由があり、原判決はその余の上告理由について

判断するまでもなく破棄を免れない。

 

そして、前記追認拒絶によってFの無権代理行為が本人である

Eに対し効力を生じないことが確定した以上、

上告人らがF及びEを相続したことによって本人が

自ら法律行為をしたのと同様の法律上の地位を生じたとする

被上告人らの主張は採用することができない。

 

また、前記事実関係の下においては、被上告銀行及び

被上告会社の表見代理の主張も採用することができない。

 

上告人らの請求は理由があり、

被上告会社の反訴請求は理由がないから、

第一審判決を取り消し、上告人らの請求を認容し、

被上告会社の反訴請求を棄却することとする。

 

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