栃木県知事の交際費に係る公文書の栃木県公文書の開示に関する条例(昭和61年栃木県条例第1号)6条5号該当性

(平成6年1月27日最高裁)

事件番号  平成3(行ツ)69

 

最高裁判所の見解

1 知事の交際費は、都道府県における行政の円滑な運営を図るため、

関係者との懇談や慶弔等の対外的な交際事務を

行うのに要する経費である。このような知事の交際は、

本件条例六条五号にいう交渉その他の事務に該当すると解されるから、

これらの事務に関する情報を記録した文書を開示しないことができるか否かは、

これらの情報を公開することにより、

知事の交際事務の実施の目的が失われ、

又はその公正若しくは適切な実施を著しく

困難にするおそれがあるか否かによって決定されることになる。

 

2 本件文書のうち、交際の相手方が個人であって

相手方が識別されない知事の交際事務に関する

三三件の情報が記録されているものについては、

これを開示しても、これによって

その交際の相手方の氏名が明らかにされるものでない以上、

相手方に不満、不快の念を抱かせるような事態を招くことは考え難く、

知事の交際事務の実施の目的が失われ、

又はその公正若しくは適切な実施を

著しく困難にするおそれはないというべきであるから、

その本件条例六条五号該当性を否定した原審の判断は相当である。

 

3 しかし、本件文書のうち、相手方が法人等である

二一九件の情報が記録されているものは、

祝儀、慶弔、広告、賛助金、贈答品、みやげ等に関するものであり、

その中には、相手方の名称等が記録されているものがあり、また、

一般人が通常入手し得る関連情報と照合することによって

相手方が識別され得るようなものが含まれていることも当然に予想される。

 

そして、知事の交際は、いずれにしても、

相手方との間の信頼関係ないし友好関係の維持増進を

目的として行われるものであるところ、

相手方の名称等の公表、披露が

当然予定されているような場合等は別として、

相手方を識別し得るような前記文書の開示によって

相手方の名称や支出金額が明らかにされることになれば、

交際費の支出の要否、内容等は、県の相手方とのかかわり等を

しん酌して個別に決定されるという性質を有するものであることから、

不満や不快の念を抱く者が出ることが容易に予想される。

 

そのような事態は、交際の相手方との間の

信頼関係あるいは友好関係を損なうおそれがあり、

交際それ自体の目的に反し、ひいては

交際事務の実施の目的が失われるおそれがあるというべきである。

 

また、これらの交際費の支出の要否やその内容等は、

支出権者である知事自身が、個別、具体的な事例ごとに、

裁量によって決定すべきものであるところ、

交際の相手方や内容等が逐一公開されることとなった場合には、

知事においても前記のような事態が生ずることを懸念して、

必要な交際費の支出を差し控え、あるいは

その支出を画一的にすることを余儀なくされることも考えられ、

知事の交際事務の適切な実施を著しく

困難にするおそれがあるといわなければならない。

 

そうすると、右二一九件の情報が記録されている

文書のうち交際の相手方が識別され得るものは、

相手方の名称等が外部に公表、披露されることが

もともと予定されているものなど、

相手方の名称等を公表することによって前記のようなおそれが

あるとは認められないようなものを除き、

本件条例六条五号により開示しないことが

できる文書に該当するというべきである。

 

四 以上の次第であるから、原審の判断のうち、

本件文書における原判決添付別表記載の

「相手方が個人」欄中の「識別されないもの」欄の

三三件の情報が記録されている部分について

これを開示しないこととした本件処分を違法とした部分は、

正当として是認することができ、この部分に関する論旨は理由がない。

 

しかし、同表記載の「相手方が法人その他の団体」欄の

二一九件の情報について、その相手方が

識別されるものであるか否かなどの点を

個別、具体的に検討することなく、

本件文書におけるこれが記録されている部分を

開示しないこととした本件処分をすべて違法とした部分は、

本件条例六条五号に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、

その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。

 

そうすると、この部分に関する論旨は理由があるので、

原判決中この部分は破棄を免れず、

以上判示したところに従って、右二一九件の情報が

本件条例六条五号に該当するか否かにつき更に審理を尽くさせるため、

右部分につき本件を原審に差し戻すのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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