株主総会で株主が希望する席に座る機会を失った右株主は法的利益が侵害されたか
(平成8年11月12日最高裁)
事件番号 平成5(オ)1747
最高裁判所の見解
上告人A1の本件請求は、本件株主総会の会場において
希望する座席を確保するために被上告会社本社ビルの近くに
宿泊して本件株主総会当日に早朝から入場者の列に並んだが、
被上告会社から従業員株主らとの間で
前記の差別的取扱いを受けたことにより、
希望する席を確保することができず、
これによって精神的苦痛を被り、
更に宿泊料相当の財産的損害を被ったと主張して、
被上告会社に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めるものである。
三 株式会社は、同じ株主総会に出席する株主に対しては
合理的な理由のない限り、同一の取扱いをすべきである。
本件において、被上告会社が前記一の2のとおり
本件株主総会前の原発反対派の動向から本件株主総会の
議事進行の妨害等の事態が発生するおそれがあると考えたことについては、
やむを得ない面もあったということができるが、
そのおそれのあることをもって、被上告会社が従業員株主らを
他の株主よりも先に会場に入場させて株主席の前方に
着席させる措置を採ることの合理的な理由に当たるものと
解することはできず、被上告会社の右措置は、
適切なものではなかったといわざるを得ない。
しかしながら、上告人A1は、希望する席に座る機会を失ったとはいえ、
本件株主総会において、会場の中央部付近に着席した上、
現に議長からの指名を受けて動議を提出しているのであって、
具体的に株主の権利の行使を妨げられたということはできず、
被上告会社の本件株主総会に関する措置によって
上告人A1の法的利益が侵害されたということはできない。
そうすると、被上告会社が不法行為の責任を負わないとした原審の判断は、
是認することができ、原判決に所論の違法はない。
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