根抵当権者の損害賠償請求

(平成22年9月9日最高裁)

事件番号  平成21(受)1661

 

この裁判は、

土地の賃貸人及び転貸人が,転借人所有の地上建物の根抵当権者に対し,

借地権の消滅を来すおそれのある事実が生じたときは

通知する旨の条項を含む念書を差し入れた場合において,

賃貸人及び転貸人が地代不払の事実を土地の転貸借契約の解除に先立ち

根抵当権者に通知する義務を負い,その不履行を理由とする

根抵当権者の損害賠償請求が

信義則に反するとはいえないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

前記事実関係によれば,本件念書は,数個の条項で構成され,

そのうちの本件事前通知条項には,本件各土地に係る

Aの借地権の消滅を来すおそれのある事実が生じた場合は,

上告人らは,被上告人にこれを通知し,

借地権の保全に努める旨が明記されている上,

上告人らは,事前に本件念書の内容を十分に検討する機会を与えられて

これに署名押印又は記名押印をしたというのであるから,

上告人らは,本件念書を差し入れるに当たり,本件事前通知条項が,

上告会社においてAの地代不払を理由に

本件転貸借契約を解除する場合には,

上記の地代不払が生じている事実を遅くとも解除の前までに

被上告人に通知する義務を負うとの趣旨の条項で

あることを理解していたものといわざるを得ない。

 

そうすると,上告人らは,本件念書を差し入れることによって,

上記の義務を負う旨を合意したものであり,

その不履行により被上告人に損害が生じたときは,

損害賠償を請求することが信義則に反すると認められる場合は別として,

これを賠償する責任を負うというべきである。

 

このことは,上告人らが,本件念書の内容,効力等につき

被上告人から直接説明を受けておらず,本件念書を差し入れるに当たり

被上告人から対価の支払を受けていなかったなどの

事情があっても,異ならない。

 

そして,上告人らが不動産の賃貸借を目的とする会社等であること,

上告人らが本件念書を差し入れるに至った経緯,

上告会社が本件転貸借契約を解除するに至った

経緯等諸般の事情にかんがみると,

被上告人が上告人らに対して上記の義務違反を理由として

損害賠償を請求することが信義則に反し,

許されないとまでいうことはできず,

被上告人の過失をしん酌し,上告人らが

上記の義務を履行しなかったことにより

被上告人に生じた損害の額から,

8割を減額するにとどめた原審の判断は相当というべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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