検察官がした刑事確定訴訟記録の閲覧申出不許可処分に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件

(平成24年6月28日最高裁)

事件番号  平成24(し)25

 

この裁判は、

刑事確定訴訟記録法に基づく判決書の閲覧請求を不許可とした

保管検察官の処分が同法4条2項4号及び5号の解釈適用を

誤っているとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

本件は,申立人が,弁護士吉川拓威を代理人として,

民事訴訟等の準備のために被告人A及び被告人Bに対する

各組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する

法律違反被告事件(以下「本件被告事件」という。)に係る

刑事確定訴訟記録のうち本件被告事件の第1審の

判決書(以下「本件判決書」という。)の閲覧請求をしたのに対し,

同記録の保管検察官が,法4条2項4号及び5号に当たるとして

閲覧を不許可とした(以下「本件不許可処分」という。)ので,

申立人が準抗告を申し立てたという事案である。

 

原決定は,申立人の本件判決書の閲覧目的について,

申立人が代理人を務める株式会社甲(以下「依頼会社」という。)に対し,

同社の株主であるCから株主の地位に基づいて

株主総会の招集等の請求がされているところ,Cは,

本件被告事件の被告人両名がそれぞれ代表取締役,

専務取締役を務める株式会社乙(以下「本件会社」という。)の

前任の代表取締役であり,被告人両名が本件会社の活動として

行った本件被告事件の判決書を閲覧して,

本件会社が以前から組織的に犯罪行為を

行っていたことを明らかにすることによって,

Cの依頼会社に対する請求が権利濫用であるとの主張を

根拠付けるためというものであるとし,その上で,

本件判決書の閲覧を許可した場合には,

Cらとの間の民事裁判において本件判決書の内容が明らかにされ,

被告人両名の前科の存在及びその内容並びに

本件会社関係者が犯行に関与した事実が

不特定多数の者の知るところとなるおそれがあるとして,

法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に該当すると認めた。

 

そして,弊害の内容及び程度と比較して,

申立人に本件判決書を閲覧させる必要性は低いと言わざるを得ないから,

閲覧につき正当な理由があると認めることもできないとして,

準抗告の申立てを棄却した。

 

しかしながら,本件で申立人が閲覧請求をしている

刑事確定訴訟記録である第1審判決書は,

国家刑罰権の行使に関して裁判所の判断を示した重要な記録として,

裁判の公正担保の目的との関係においても

一般の閲覧に供する必要性が高いとされている記録であるから,

その全部の閲覧を申立人に許可した場合には,

Cらとの間の民事裁判において,

その内容が明らかにされるおそれがあり,

法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に当たる可能性がないではないが,

そのような場合であっても,

判決書の一般の閲覧に供する必要性の高さに鑑みると,

その全部の閲覧を不許可とすべきではない。

 

本件では,申立人が「プライバシー部分を除く」範囲での

本件判決書の閲覧請求をしていたのであるから,

保管検察官において,申立人に対して釈明を求めて

その限定の趣旨を確認した上,閲覧の範囲を検討していたとすれば,

法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由には当たらない方法を講じつつ,

閲覧を許可することができたはずであり,

保管検察官において,そのような検討をし,

できる限り閲覧を許可することが,法の趣旨に適うものと解される

 

以上によれば,本件判決書の閲覧請求について,

「プライバシー部分を除く」として請求がされていたにもかかわらず,

その趣旨を申立人に確認することなく,

閲覧の範囲を検討しないまま,民事裁判において

その内容が明らかにされるおそれがあるというだけの理由で

法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に該当するとして

本件判決書全部の閲覧を不許可とした保管検察官の処分には,

同条項の解釈適用を誤った違法があると言わざるを得ない

 

そうすると,これをそのまま是認して準抗告を棄却した原決定にも,

決定に影響を及ぼすべき法令違反があり,

これらを取り消さなければ著しく正義に反するものと認められる。

 

本件については,保管検察官において,

「プライバシー部分を除く」との趣旨につき申立人に確認した上,

法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に当たらない範囲での閲覧について

改めて検討すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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