業務上の注意義務

(平成24年2月8日最高裁)

事件番号  平成21(あ)359

 

この裁判は、

トラックのハブが走行中に輪切り破損したために前輪タイヤ等が脱落し,

歩行者らを死傷させた事故について,同トラックの製造会社で

品質保証業務を担当していた者において,

同種ハブを装備した車両につきリコール等の改善措置の実施のために

必要な措置を採るべき業務上の注意義務があったとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

本件証拠関係の下においては,被告人らが責任を問われている

平成11年の時点においては,

Dハブの強度は自技会の定める基準を満足しているのであり,

リコールの届出基準に該当していなかったものと

一応認められるのであって,

同時点において被告人らにリコール等の改善措置を

講ずべき義務を認める多数意見の結論を是認することはできない。

 

しかしながら,Dハブの強度の安全性に関しては,

前記のとおり本来提出されるべきDハブ設計時の資料や

検察官が捜査段階で実施した鑑定結果も証拠として提出されず,

またDハブの設計基準との関係で重要な意義を有する自技会についても,

その組織や我が国の自動車業界における位置づけ等について

明らかにすることなく,また,自技会が定める基準の意義や

その策定手続に関する資料が全く顕出されていないのであって,

かかる証拠構造の下で,被害者の死亡という重大な結果をもたらし,

また自動車の部品という極めて汎用性の高い工業部品に

かかる瑕疵の有無に関する刑事責任を問う

本件につき最終判断をなすことは,

審理不尽の謗りを受けざるを得ないと考える。

 

また,仮にDハブの安全強度にリコール届出義務を認めるに足る

基準不適合状態が認められなかったとしても,

第8に記載したとおり,中国JRバス事故の処理過程で,

三菱自工はホイールナットの締付け不良と過酷条件によって,

ハブの破断事故が生じ得ることを明確に認識したのであるから,

ユーザーに対してはハブ等の保守・点検を適切になすと

共に過酷条件による供用を厳に差し控えるべきことを,

自動車整備工場に対しては,定期点検時にハブの摩耗の有無等についても

点検すべきことを周知させる必要があったものと認められる余地がある。

 

本件事案の重大性に鑑みれば,上記の如き周知をなすことが

法的な義務に該当するか否か,仮にそれが肯定されるとした場合に,

被告人らの責任が問われるべきか否かについて更に審理を尽くさせるために,

一,二審判決を破棄して本件を

一審に差し戻すことが必要であると言える。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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