業務上過失傷害被告事件
(平成15年2月20日最高裁)
事件番号 平成12(あ)1242
最高裁判所の見解
原判決が認定した過失は,被告人が
「進路前方を注視せず,ハンドルを右方向に転把して進行した」
というものであるが,これは,被告人が
「進路前方を注視せず,進路の安全を確認しなかった」
という検察官の当初の訴因における過失の
態様を補充訂正したにとどまるものであって,
これを認定するためには,必ずしも訴因変更の手続を経ることを
要するものではないというべきである。
したがって,上記の過失を認定するためには
訴因変更の手続を要するとの前提に立って,第1審裁判所には,
検察官に対し訴因変更を促し又はこれを命ずる義務があり,
これをすることなく直ちに無罪の判決をしたことに,
判決に影響を及ぼすべき審理不尽の
違法があるとした原判決の判断は,
法令の解釈を誤ったものといわざるを得ない。
しかしながら,記録によれば,原判決は,
第1審判決に事実誤認があると判断した限りにおいては正当であり,
この事実誤認は判決に影響を及ぼすものと解するのが相当であって,
いずれにせよ第1審判決は破棄を免れないものというべきである。
したがって,原判決に法令違反はあるものの,
原判決が第1審判決を破棄して有罪判決を
言い渡した結論自体は正当であって,
原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない。
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