業務上過失致死傷罪

(平成22年5月31日最高裁)

事件番号  平成19(あ)1634

 

この裁判は、

花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で

多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,

雑踏警備に関し現場で警察官を指揮する立場にあった警察署地域官及び

現場で警備員を統括する立場にあった警備会社支社長に

業務上過失致死傷罪が成立するとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

被告人Aは,明石警察署地域官かつ本件夏まつりの現地警備本部指揮官として,

現場の警察官による雑踏警備を指揮する立場にあったもの,

被告人Bは,明石市との契約に基づく警備員の統括責任者として,

現場の警備員による雑踏警備を統括する立場にあったものであり,

本件当日,被告人両名ともに,これらの立場に基づき,

本件歩道橋における雑踏事故の発生を未然に防止し,

参集者の安全を確保すべき業務に従事していたものである。

 

しかるに,原判決の判示するように,遅くとも午後8時ころまでには,

歩道橋上の混雑状態は,明石市職員及び警備員による自主警備によっては

対処し得ない段階に達していたのであり,そのころまでには,

前記各事情に照らしても,被告人両名ともに,

直ちに機動隊の歩道橋への出動が要請され,

これによって歩道橋内への流入規制等が実現することにならなければ,

午後8時30分ころに予定される花火大会終了の前後から,

歩道橋内において双方向に向かう参集者の流れがぶつかり,

雑踏事故が発生することを容易に予見し得たものと認められる。

 

そうすると,被告人Aは,午後8時ころの時点において,

直ちに,配下警察官を指揮するとともに,

機動隊の出動を明石警察署長らを介し又は直接要請することにより,

歩道橋内への流入規制等を実現して雑踏事故の発生を

未然に防止すべき業務上の注意義務があったというべきであり,また,

被告人Bは,午後8時ころの時点において,直ちに,

明石市の担当者らに警察官の出動要請を進言し,

又は自ら自主警備側を代表して警察官の出動を要請することにより,

歩道橋内への流入規制等を実現して雑踏事故の発生を

未然に防止すべき業務上の注意義務があったというべきである。

 

そして,前記のとおり,歩道橋周辺における機動隊員の配置状況等からは,

午後8時10分ころまでにその出動指令があったならば,

本件雑踏事故は回避できたと認められるところ,

被告人Aについては,前記のとおり,

自己の判断により明石警察署長らを介し又は

直接要請することにより機動隊の出動を実現できたものである。

 

また,被告人Bについては,原判決及び第1審判決が判示するように,

明石市の担当者らに警察官の出動要請を進言でき,さらに,

自らが自主警備側を代表して警察官の出動を要請することもできたのであって,

明石市の担当者や被告人Bら自主警備側において,

警察側に対して,単なる打診にとどまらず,

自主警備によっては対処し得ない状態であることを

理由として警察官の出動を要請した場合,

警察側がこれに応じないことはなかったものと認められる。

 

したがって,被告人両名ともに,午後8時ころの時点において,

上記各義務を履行していれば,歩道橋内に機動隊による

流入規制等を実現して本件事故を回避することは

可能であったということができる。

 

そうすると,雑踏事故はないものと軽信し,

上記各注意義務を怠って結果を回避する

措置を講じることなく漫然放置し,

本件事故を発生させて多数の参集者に

死傷の結果を生じさせた被告人両名には,

いずれも業務上過失致死傷罪が成立する。

これと同旨の原判断は相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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