権利移転の効果

(平成6年3月8日最高裁)

事件番号  平成2(オ)1455

 

最高裁判所の見解

民法の一一五一条は、相続人が数人あるときは、

遺産の分割前にあっては、遺産の全部は

各相続人の公同共有とする旨規定しているところ、

右規定にいう「公同共有」とは、いわゆる合有に当たるものと解される。

 

そして、同法八二八条一項は、公同共有者の権利義務は、

その公同関係を規定する法律又は契約によってこれを定めるものとし、

同条二項は、前項の法律又は契約に別段の定めがある場合を除く外、

公同共有物の処分その他の権利の行使については、

公同共有者全員の同意を経ることを要する旨規定している。

 

したがって、本件の場合、相続の準拠法によれば、

本件不動産は共同相続人の合有に属し、上告人らは、

遺産の分割前においては、共同相続人全員の同意がなければ、

相続に係る本件不動産の持分を処分することが

できないというべきところ、右持分の処分(本件売買)が

Dの遺産の分割前にされたものであり、かつ、

右処分につき共同相続人全員の同意を得ていないことは、

原審の確定した事実からうかがうことができる。

 

そうすると、上告人らが相続準拠法上の規定を遵守しないで

相続財産の持分の処分をしたとすれば、

その処分(本件売買)に権利移転(物権変動)の効果が生ずるかどうかが

次に問題となるが、前示のとおり、

この点は日本法によって判断されるべきところ、

日本法上は、右のような処分も、

処分の相手方である第三者との関係では有効であり、

処分の相手方は有効に権利を取得するものと解するのが相当である。

 

けだし、相続の準拠法上、相続財産がいわゆる合有とされ、

相続人が遺産分割前に個別の財産の相続持分を

単独で処分することができないとされているとしても、

日本法上、そのような相続財産の合有状態ないし

相続人の処分の制限を公示する方法はなく、

一方、日本法上、共同相続人が分割前の遺産を

共同所有する法律関係は、

基本的には民法二四九条以下に規定する共有としての

性質を有するものとされ

(最高裁昭和二八年(オ)第一六三号同三〇年五月三一日第三小法廷判決・

民集九巻六号七九三頁参照)、共同相続人の一人から

遺産を構成する特定不動産について同人の有する

共有持分権を譲り受けた第三者は、

適法にその権利を取得することができるものとされているのであって

(最高裁昭和三五年(オ)

第一一九七号同三八年二月二二日第二小法廷判決・

民集一七巻一号二三五頁参照)、我が国に所在する不動産について、

前記のような相続準拠法上の規定を

遵守しないでされた処分を無効とするときは、

著しく取引の安全を害することとなるからである。

 

以上によれば、本件売買契約がDの共同相続人全員の同意を得ることなく

締結されたとしても、物権の移転に関する準拠法である日本法によれば、

右契約による権利移転の効果が認められるものというべきである。

 

そうすると、原審のした

準拠法の選択については誤った点があるが、

その結論は是認することができる。

論旨は採用することができない。

 

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