横浜一家3人殺害事件
(平成19年11月15日最高裁)
事件番号 平成17(あ)1319
最高裁判所の見解
本件は,被告人が,離婚を決意して実家に戻っていた妻の浮気を疑い,
執着していた妻に裏切られたことに対する怒りから,
妻を実家から無理やり連れ出して
その男性関係を白状させることなどを企て,
その実行方法を計画する中で,
実家で同居中であった妻の息子や両親が騒ぐなどして
邪魔をする場合には同人らを殺害するのもやむを得ないと考え,
刃体の長さ約16.2㎝のアタックナイフ及び
同約46㎝の刃物であるニンジャソード,手錠,
ガラス切り等の道具を購入するなどの準備をし,
深夜,計画どおり妻の実家のマンションに忍び込み,
妻を無理やり連れ出そうとしたが,その際,
上記息子及び両親が異変に気付いて目を覚まして起きてきたため,
同人らを殺害することを決意し,用意していた
上記アタックナイフで同人ら3名の胸部,腹部等を
多数回突き刺して殺害したという殺人及び
その際の住居侵入,銃砲刀剣類所持等取締法違反のほか,
これに引き続いて犯した妻に対する逮捕監禁致傷及び
逃走中の窃盗並びに上記殺人事件以前に
妻に対して犯していた逮捕監禁,傷害の事案である。
殺人の犯行は,妻を連れ出すことの邪魔になるというだけの理由によって,
全く落ち度のない3名を殺害したという極めて身勝手なものであって,
動機や経緯に酌量の余地はない。
かつては自己の養子でもあったいまだ12歳の少年を含む
3名の生命を奪ったという結果は極めて重大であり,
背中を向け,あるいは後ずさりして逃げようとする被害者らを
次々に鋭利な刃物で多数回突き刺し,いずれもその場で
失血死させたという犯行態様の残虐性や,
計画性などにも照らすと,誠に悪質な犯行といわざるを得ない。
これらに加え,被告人が,上記殺害行為の後,
現場から妻を連れ出して自動車に監禁し,
その後4日間にわたり逃走を続けたこと,
事件後に離婚した妻を含む遺族の被害感情が厳しいこと,
社会に与えた影響も看過し難いものがあることにも照らすと,
被告人が逮捕後は反省の態度を示していること,
前科がないことなど,被告人のために酌むべき情状を十分考慮しても,
原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,
やむを得ないものとして当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
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