正当防衛

(平成21年7月16日最高裁)

事件番号  平成20(あ)1870

 

この裁判は、

財産的権利等を防衛するためにした暴行が

刑法36条1項にいう「やむを得ずにした行為」

に当たるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

事実関係を踏まえて検討するに,

Bらが立入禁止等と記載した本件看板を本件建物に設置することは,

被告人らの本件建物に対する共有持分権,

賃借権等を侵害するとともに,F宅建の業務を妨害し,

被告人らの名誉を害するものといわなければならない。

 

そして,Bの依頼を受けたCらは,

本件建物のすぐ前において本件看板を取り付ける作業を開始し,

被告人がこれを取り上げて踏み付けた後も,

Bがこれを持ち上げ,付けてくれと言って

Cに渡そうとしていたのであるから,

本件暴行の際,Bらはなおも本件看板を

本件建物に取り付けようとしていたものと認められ,

その行為は,被告人らの上記権利や業務,

名誉に対する急迫不正の侵害に当たるというべきである。

 

そして,被告人は,BがCに対して

本件看板を渡そうとしたのに対し,

これを阻止しようとして本件暴行に及び,

Bを本件建物から遠ざける方向に押したのであるから,

Bらによる上記侵害から被告人らの上記権利等を

防衛するために本件暴行を行ったものと認められる。

 

さらに,Bらは,本件建物のガラスを割ったり

作業員を威圧したりすることによって

被告人らが請け負わせた本件建物の

原状回復等の工事を中止に追い込んだ上,

本件建物への第三者の出入りを妨害し,

即時抗告棄却決定の後においても,

立入禁止等と記載した看板を本件建物に設置するなど,

本件以前から継続的に被告人らの本件建物に対する権利等を実力で

侵害する行為を繰り返しており,本件における上記不正の侵害は

その一環をなすものである。

 

一方,被告人とBとの間には体格差等があることや,

Bが後退して転倒したのは被告人の力のみによるものとは

認め難いことなどからすれば,本件暴行の程度は

軽微なものであったというべきである。

 

そうすると,本件暴行は,被告人らの主として

財産的権利を防衛するために

Bの身体の安全を侵害したものであることを考慮しても,

いまだBらによる上記侵害に対する防衛手段としての

相当性の範囲を超えたものということはできない。

 

以上によれば,本件暴行については,

刑法36条1項の正当防衛として違法性が阻却されるから,

これに正当防衛の成立を認めなかった原判決は,

事実を誤認したか,同項の解釈適用を誤ったものといわざるを得ない

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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