民事上の不法行為である名誉毀損

(平成23年4月28日最高裁)

事件番号  平成21(受)2057

 

この裁判では、

新聞社が通信社からの配信に基づき自己の発行する新聞に

記事を掲載するに当たり当該記事に摘示された事実を

真実と信ずるについて相当の理由があるといえる場合について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

5(1) 民事上の不法行為である名誉毀損については,

その行為が公共の利害に関する事実に係り,

その目的が専ら公益を図るものである場合には,

摘示された事実が真実であることの証明がなくても,

行為者がそれを真実と信ずるについて相当の理由があるときは,

同行為には故意又は過失がなく,不法行為は成立しない

(最高裁昭和37年(オ)第815号同41年6月23日

第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁参照)。

 

新聞社が通信社を利用して国内及び国外の幅広いニュースを

読者に提供する報道システムは,新聞社の報道内容を充実させ,

ひいては国民の知る権利に奉仕するという重要な社会的意義を有し,

現代における報道システムの一態様として,

広く社会的に認知されているということができる。

 

そして,上記の通信社を利用した報道システムの下では,

通常は,新聞社が通信社から配信された記事の内容について

裏付け取材を行うことは予定されておらず,

これを行うことは現実には困難である。それにもかかわらず,

記事を作成した通信社が当該記事に摘示された事実を真実と

信ずるについて相当の理由があるため

不法行為責任を負わない場合であっても,

当該通信社から当該記事の配信を受け,

これをそのまま自己の発行する新聞に掲載した新聞社のみが

不法行為責任を負うこととなるとしたならば,

上記システムの下における報道が萎縮し,

結果的に国民の知る権利が

損なわれるおそれのあることを否定することができない。

 

そうすると,新聞社が,通信社からの配信に基づき,

自己の発行する新聞に記事を掲載した場合において,少なくとも,

当該通信社と当該新聞社とが,記事の取材,作成,配信及び掲載という

一連の過程において,報道主体としての

一体性を有すると評価することができるときは,

当該新聞社は,当該通信社を取材機関として利用し,

取材を代行させたものとして,当該通信社の取材を

当該新聞社の取材と同視することが相当であって,

当該通信社が当該配信記事に摘示された事実を真実と信ずるについて

相当の理由があるのであれば,当該新聞社が当該配信記事に

摘示された事実の真実性に疑いを抱くべき事実があるにもかかわらず

これを漫然と掲載したなど特段の事情のない限り,

当該新聞社が自己の発行する新聞に掲載した記事に

摘示された事実を真実と信ずるについても

相当の理由があるというべきである。

 

そして,通信社と新聞社とが報道主体としての

一体性を有すると評価すべきか否かは,

通信社と新聞社との関係,通信社から

新聞社への記事配信の仕組み,新聞社による記事の内容の

実質的変更の可否等の事情を総合考慮して判断するのが相当である。

 

以上の理は,新聞社が掲載した記事に,

これが通信社からの配信に基づく記事である旨の

表示がない場合であっても異なるものではない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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