民事上の請求として自衛隊の使用する航空機の離着陸等の差止め及び右航空機の騒音の規制を求める訴えの適否

(平成5年2月25日最高裁)

事件番号  昭和62(オ)58

 

最高裁判所の見解

被上告人による本件飛行場の使用及び供用が

第三者に対する関係において違法な権利侵害ないし

法益侵害となるかどうかについては、

侵害行為の態様と侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、

侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と

程度等を比較検討するほか、侵害行為の開始と

その後の継続の経過及び状況、その間に採られた

被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等の事情をも考慮し、

これらを総合的に考察して判断すべきものである

(最高裁昭和五一年(オ)第三九五号同五六年一二月一六日大法廷判決・

民集三五巻一〇号一三六九頁参照)。

 

これを本件について検討すると、次のとおりである。

すなわち、(1) 本件飛行場の使用及び供用による騒音等の被害は、

それが原審認定のような情緒的被害、睡眠妨害、

生活妨害にとどまるものであるとしても、上告人らが

これを当然に受忍しなければならないような

軽度の被害であるということはできず、また、

原審の認定したところによれば、その被害を受ける地域住民は、

かなりの多数にのぼっているというのである。

 

(2) 上告人らの被害の程度と本件飛行場の使用及び供用の公共性ないし

公益上の必要性との比較検討に当たっては、本件飛行場の周辺住民が

本件飛行場の存在によって受ける利益とこれによって被る被害との間に、

後者の増大に必然的に前者の増大が伴うというような

彼此相補の関係が成り立つかどうかの検討が

必要であるというべきところ(前記大法廷判決参照)、

原審はこの点について何ら判断をしていないのみならず、

その認定事実からは、本件において

右のような関係があることはうかがわれない。

 

(3) 被上告人が講じた被害対策及びその効果については、

原審の認定したところによれば、住宅防音工事は原則として

一室ないし二室について施行されているにすぎないため騒音が

十分に防止されているものとはいえず、

移転措置は補償額が現実の不動産取引価格からみて

相当に低廉であることなどから騒音被害の改善に

予期したほどの効果をあげておらず、緑地整備は激甚な

航空機騒音等の深刻な被害の救済改善に直接的かつ

効果的な対策となっているとはいい難く、

自衛隊機及び米軍機の騒音の軽減低下はほとんど期待し得ず、

飛行コースの変更等による騒音防止措置には限界がある、というのである。

 

そうすると、原審は、本件飛行場の使用及び供用に基づく

侵害行為の違法性を判断するに当たり、

前記のような各判断要素を十分に比較検討して

総合的に判断することなく、単に本件飛行場の使用及び

供用が高度の公共性を有するということから、

上告人らの前記被害は受忍限度の範囲内にあるとしたものであって、

右判断には不法行為における侵害行為の違法性に関する

法理の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、

右違法が判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。

 

したがって、過去の損害の賠償請求を棄却すべきものとした

原審の判断につき違法をいう論旨は、

その余の点について判断するまでもなく理由がある。

 

以上によれば、原判決中上告人らの過去の損害

(原審口頭弁論終結の日である昭和六〇年八月二八日までに生じた損害)の

賠償請求を棄却すべきものとした部分は、

違法として破棄を免れない。

 

そして、前記違法性の判断及び損害賠償額の算定等について

更に審理を尽くさせる必要があるから、

右部分につき本件を原審に差し戻すこととする。

 

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