民事保全法23条2項,民事保全法24条

(平成16年8月30日最高裁)

事件番号  平成16(許)19

 

 

最高裁判所の見解

本件仮処分命令の申立ては,

仮の地位を定める仮処分命令を求めるものであるが,

その発令には,「争いがある権利関係について

債権者に生ずる著しい損害又は

急迫の危険を避けるためこれを必要とするとき」

との要件が定められており(民事保全法23条2項),

この要件を欠くときには,

本件仮処分命令の申立ては理由がないことになる。

 

そして,本件仮処分命令の申立てが

この要件を具備するか否かの点は,

本件における重要な争点であり,

本件仮処分命令の申立て時以降,

当事者双方が,十分に主張,疎明を尽くしているところである。

 

そこで,この点について検討するに,前記の事実関係によれば,

本件基本合意書には,抗告人及び相手方らが,

本件協働事業化に関する最終的な合意を

すべき義務を負う旨を定めた規定はなく,

最終的な合意が成立するか否かは,今後の交渉次第であって,

本件基本合意書は,その成立を保証するものではなく,

抗告人は,その成立についての期待を

有するにすぎないものであることが明らかである。

 

そうであるとすると,相手方らが本件条項に違反することにより

抗告人が被る損害については,最終的な合意の成立により

抗告人が得られるはずの利益相当の損害とみるのは相当ではなく,

抗告人が第三者の介入を排除して有利な立場で相手方らと

交渉を進めることにより,抗告人と相手方らとの間で

本件協働事業化に関する最終的な合意が成立するとの期待が

侵害されることによる損害とみるべきである。

 

抗告人が被る損害の性質,内容が上記のようなものであり,

事後の損害賠償によっては償えないほどのものとまではいえないこと,

前記のとおり,抗告人と相手方らとの間で,

本件基本合意に基づく本件協働事業化に関する

最終的な合意が成立する可能性は相当低いこと,

しかるに,本件仮処分命令の申立ては,

平成18年3月末日までの長期間にわたり,

相手方らが抗告人以外の第三者との間で前記情報提供又は

協議を行うことの差止めを求めるものであり,

これが認められた場合に相手方らの被る損害は,

相手方らの現在置かれている状況からみて,

相当大きなものと解されること等を総合的に考慮すると,

本件仮処分命令により,暫定的に,相手方らが抗告人以外の

第三者との間で前記情報提供又は協議を行うことを差し止めなければ,

抗告人に著しい損害や急迫の危険が生ずるものとはいえず,

本件仮処分命令の申立ては,上記要件を欠くものというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク