民事執行法10条,民事執行法11条1,民事執行法35条

(平成18年9月11日最高裁)

事件番号  平成18(許)13

 

この裁判では、

強制執行を受けた債務者がその請求債権につき

強制執行を行う権利の放棄又は不執行の合意が

あったことを主張して裁判所に強制執行の

排除を求める場合に執るべき手続について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

債務弁済契約公正証書の債権者である相手方の申立てにより,

債務者の承継人である抗告人らに対し,

同公正証書に基づく債権差押命令及び転付命令が発せられたところ,

抗告人らは,請求債権について強制執行を行う権利の放棄又は

不執行の合意(以下「不執行の合意等」という。)が

あったことを主張して執行抗告をした。

 

抗告人らの主張する不執行の合意等は,

債権の効力のうち請求権の内容を強制執行手続で

実現できる効力(いわゆる強制執行力)を排除又は

制限する法律行為と解されるので,これが存在すれば,

その債権を請求債権とする強制執行は

実体法上不当なものとなるというべきである。

 

しかし,不執行の合意等は,実体法上,

債権者に強制執行の申立てをしないという

不作為義務を負わせるにとどまり,

執行機関を直接拘束するものではないから,

不執行の合意等のされた債権を請求債権として

実施された強制執行が民事執行法規に照らして

直ちに違法になるということはできない。

 

そして,民事執行法には,実体上の事由に基づいて

強制執行を阻止する手続として,

請求異議の訴えの制度が設けられており,

不執行の合意等は,上記のとおり,

債権の効力の一部である強制執行力を排除又は

制限するものであって,請求債権の効力を停止又は

限定するような請求異議の事由と実質を

同じくするものということができるから,

その存否は,執行抗告の手続ではなく,

請求異議の訴えの訴訟手続によって

判断されるべきものというべきである。

 

抗告人らは,執行抗告によって不執行の合意等の

存在を主張することができるというが,

執行抗告は,強制執行手続においては,

その執行手続が違法であることを理由とする民事執行の

手続内における不服申立ての制度であるから,

実体上の事由は執行抗告の理由とはならないというべきである。

 

なお,不執行の合意等の存否が

執行異議の手続で判断されるべきでないことは,

上記検討によって明らかである。

 

以上によれば,強制執行を受けた債務者が,

その請求債権につき強制執行を行う権利の放棄又は

不執行の合意があったことを主張して裁判所に

強制執行の排除を求める場合には,

執行抗告又は執行異議の方法によることはできず,

請求異議の訴えによるべきものと解するのが相当である。

 

これと見解を異にする大審院の判例(大審院大正14年(オ)

第970号同15年2月24日判決・民集5巻235頁,

大審院大正15年(オ)第1122号昭和2年3月16日判決・

民集6巻187頁,大審院昭和10年(オ)

第952号同年7月9日判決・法律新聞3869号12頁)は,

変更すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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