民事執行法145条5項,民事執行法193条,民法304条1項,民法372条
(平成14年6月13日最高裁)
事件番号 平成13(許)30
この裁判では、
抵当権に基づく物上代位権の行使としてされた債権差押命令に対する
執行抗告において被差押債権の不存在又は
消滅を理由とすることの可否について裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
本件は,相手方が,抵当権に基づく物上代位権の行使として,
抵当不動産の所有者が抗告人に対して有する同不動産の賃料債権につき,
債権差押命令の申立てをした事案である。
執行裁判所が相手方の申立てを認めて
債権差押命令を発付したのに対し,
抗告人は,その取消しを求める執行抗告をした。
抗告人は,執行抗告の理由として,
(1) 差押えの対象とされた賃料債権は
抗告人の所有者に対する債権との
相殺によって消滅したこと,
(2) 抗告人が所有者に対し支払う賃料のうち,
所有者が管理会社に対して支払うべき
抵当不動産の管理費等に相当する部分については,
差押えの対象となる賃料債権に含まれないことを主張した。
原審は,抗告人主張の執行抗告の理由を
認めることはできないと判断して,
執行抗告を棄却した。
2 執行裁判所は,担保権の存在を証する文書が提出されたときは,
申立てに係る被差押債権が物上代位の目的となる債権に該当する限り,
その存否について考慮することなく,
物上代位権の行使による差押命令を発すべきものである。
そして,第三債務者は,被差押債権の存否について,
抵当権者が提起する当該債権の取立訴訟等において
これを主張することができ,
被差押債権の全部又は一部が存在しないときは,
その部分につき執行が効を奏しないことになるだけであって,
そのような債権につき債権差押命令が発付されても
第三債務者が法律上の不利益を被ることはないのである。
したがって,抵当権に基づく物上代位権の行使としてされた
債権差押命令に対する執行抗告においては,
被差押債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることは
できないと解するのが相当である。
本件についてこれをみると,
抗告人の主張する上記執行抗告の理由は,
被差押債権とされた賃料債権の全部又は
一部が存在しない旨をいうものであって,
執行抗告の理由とすることのできない事由を
主張するものといわざるを得ない。
スポンサードリンク