民事執行法184条の適用と競売不動産の所有者が不動産競売手続上当事者として扱われたことの要否

(平成5年12月17日最高裁)

事件番号  平成2(オ)444

 

最高裁判所の見解

担保権に基づく不動産の競売は担保権の実現の手続であるから、

その基本となる担保権がもともと存在せず、

又は事後的に消滅していた場合には、

売却による所有権移転の効果は生ぜず、

所有者が目的不動産の所有権を失うことはないとするのが、

実体法の見地からみた場合の論理的帰結である。

 

しかし、それでは、不動産競売における買受人の地位が不安定となり、

公の競売手続に対する信用を損なう結果ともなるので、

民事執行法一八四条は、この難点を克服するため、

手続上、所有者が同法一八一条ないし一八三条によって

当該不動産競売手練に関与し、自己の権利を

主張する機会が保障されているにもかかわらず、

その権利行使をしなかった場合には、

実体上の担保権の不存在又は消滅によって

買受人の不動産の取得が妨げられることはないとして、

問題の立法的解決を図ったものにほかならない。

 

したがって、実体法の見地からは本来認めることのできない

当該不動産所有者の所有権の喪失を肯定するには、

その者が当該不動産競売手続上当事者として扱われ、

同法一八一条ないし一八三条の手続にのっとって

自己の権利を確保する機会を与えられていたことが

不可欠の前提をなすものといわなければならない。

 

これを要するに、民事執行法一八四条を適用するためには、

競売不動産の所有者が不動産競売手続上当事者として

扱われたことを要し、所有者がたまたま

不動産競売手続が開始されたことを知り、

その停止申立て等の措置を講ずることができたというだけでは

足りないものと解すべきである。

 

そうすると、原審の前記判断には、

同条の解釈適用を誤った違法があり、

右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。

 

論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

 

そして、本件においては、被上告人らは、

上告人らとDとの間の売買が通謀虚偽表示によるものであり、

民法九四条二項によりその登記の無効を

善意の第三者に対抗することができない旨主張しているので、

この点について更に審理を尽くさせるため、

本件を原審に差し戻すこととする。

 

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