民法210条1項所定の通行権の成否及びその具体的内容を判断するために考慮すべき事情

(平成18年3月16日最高裁)

事件番号  平成17(受)1208

 

この裁判では、

自動車による通行を前提とする民法210条1項所定の

通行権の成否及びその具体的内容を判断するために考慮すべき事情

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

(1) 前記事実関係によれば,上告人X3が所有する

957番3の土地に隣接している955番12及び同番18の各土地は,

本件分割によって生じたものではないから,

本件分割によって本件一団の土地のうち955番12及び

同番18の各土地以南の土地(以下「955番12の土地等」という。)の所有者が,

元957番の土地から分割された957番2の土地等について

213条通行権を取得したものということはできない

(本件分割当時,元957番の土地所有者と

955番12の土地及び同番18の各土地の所有者が

同一人であったという事情もうかがわれない。)。

 

したがって,955番12の土地等の所有者が

他の土地に対して有する公道に至るための通行権は,

本件分割の前後を通じて210条通行権であることに変わりはない。

 

(2) 210条通行権は,その性質上,

他の土地の所有者に不利益を与えることから,

その通行が認められる場所及び方法は,

210条通行権者のために必要にして,

他の土地のために損害が

最も少ないものでなければならない(民法211条1項)。

 

前記事実関係によれば,955番12の土地等の

現在の所有者である上告人らは,955番12の土地等から

本件道路や957番3の土地等を通じて徒歩により

公道に至ることができることから,本件においては,

徒歩による通行を前提とする210条通行権の成否が問題となる余地はなく,

本件土地について,自動車の通行を前提とする

210条通行権が成立するか否かという点のみが問題となるのであり,

上告人らも本件土地について上告人らが

自動車の通行を前提とする210条通行権を

有することの確認を求めるものである。

 

ところで,現代社会においては,自動車による

通行を必要とすべき状況が多く見受けられる反面,

自動車による通行を認めると,一般に,他の土地から通路として

より多くの土地を割く必要がある上,自動車事故が

発生する危険性が生ずることなども否定することができない。

 

したがって,自動車による通行を前提とする210条通行権の成否及び

その具体的内容は,他の土地について

自動車による通行を認める必要性,周辺の土地の状況,

自動車による通行を前提とする210条通行権が

認められることにより他の土地の所有者が被る

不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。

 

そうすると,上告人らが,本件土地につき,

自動車の通行を前提とする210条通行権を

有するかどうかという点等についても,

上記のような判断基準をもって決せられるべきものである。

 

(3) 前記事実関係によれば,①昭和47年の本件分割後,

957番2の土地は,Rに売却され,

その後鉄塔敷地として使用されており,

そのために955番12の土地等から自動車で

市道▲号線に接する957番3の土地に至るのが

困難となっていることがうかがわれること,

②他方,955番12の土地等の所有者は,

本件分割がされたころから被上告人が

本件道路を自動車によって通行することを禁じた

平成12年1月までは,本件赤道や本件道路を

自動車により通行することができたこと,したがって,

それまでは957番2の土地を含む元957番の土地を自動車で

通行する必要性がなかったこともうかがわれること,

③ところが,現在,955番12の土地等を所有している

上告人らは,本件一団の土地において,墓地を経営したり,

墓参者のための駐車場等を経営することを

計画しているというのであり,

955番12の土地等から自動車で

市道▲号線に出入りをする必要性があることがうかがわれること,

④本件土地は,▲号緑地の北西端に位置する約20㎡の

土地にすぎないことが明らかである。

 

したがって,本件土地について,

955番12の土地等の所有者である上告人らのために

自動車による通行を前提とする

210条通行権が認められるか否かは,

これらの事情の有無及び内容も,

他の事情と共に総合考慮して判断されなければならない。

 

5 以上によれば,本件分割によって生じた土地に

213条通行権が成立することを前提に,

上記事情等を考慮することなく本件土地について

自動車の通行を前提とする210条通行権の成立を

否定した原審の判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

論旨は理由があり,原判決のうち自動車の通行を前提とする

210条通行権の確認請求に関する部分は破棄を免れない。

 

そして,上告人らが,本件土地につき自動車による

通行を前提とする210条通行権を取得したかどうかについて,

更に審理を尽くさせるため,同部分につき,

本件を原審に差し戻すこととする。

 

なお,上告人らは,本件道路の通行妨害禁止及び

各ポールの撤去請求に関する上告については,

上告受理申立て理由を記載した書面を提出しないから,

同部分に関する上告は却下することとする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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